マーリン(読み)まーりん(英語表記)Maring

デジタル大辞泉 「マーリン」の意味・読み・例文・類語

マーリン(Merlin)

アーサー王伝説に登場する高徳の助言者・魔術師。王の即位や諸国平定を助けた。メルラン

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改訂新版 世界大百科事典 「マーリン」の意味・わかりやすい解説

マーリン
Merlin

アーサー王伝説中の魔法使い。ブリテンの諸王ボルチガン,ペンドラゴン,ユーサー,アーサーに仕えたとされる。ネンニウス著《ブリトン人史》の空の精アンブロシウス,12世紀のジェフリー・オブ・モンマス著《ブリテン列王史》の空と戦いの支配者ミルディンとは同一人物といわれる。父親は大気中の夢魔で母は尼僧といわれ,誕生のときに高僧が洗礼を授けたため悪魔とならず,超自然の力や予言の力が備わった。アーサー王の育成守護に力を貸し,騎士たちの座る円卓の危険の椅子を作り,聖杯探索の資格ある騎士を探した。12世紀のロベール・ド・ボロンケルト民族の叙事文学《聖杯伝説》《マーリン伝説》,W.マップの《湖のランスロット物語》《アーサー王の死》でマーリンは〈聖杯〉〈アーサー〉両伝説をつなぐ役目をし,騎士たちの冒険物語に魔法や奇跡の超自然的要素を加えさせ,さらに湖の妖精の物語をも結びつけている。マーリンは最後に,愛人の湖の精ビビアンに授けた魔法の術で,彼女のひざで眠る間に永遠に堅固な空中の塔に閉じ込められてしまう。アリオスト著《狂えるオルランド》には,マーリンの命令で一晩で悪魔が仕上げる予言の絵の広間の話がある。ウェールズのケルトの中世騎士物語《マビノギオン》,T.マロリーの作とされる《アーサー王の死》で,マーリン像は定着する。スペンサーの《神仙女王》では,アーサー王の不壊の盾や武器製作者貴婦人が愛人の姿を見る鏡の作り手となっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マーリン」の意味・わかりやすい解説

マーリン
Maring, Hendricus

[生]1883. ロッテルダム
[没]1942
オランダの社会主義者,革命家本名は J.スネーブリート。マーリンはコミンテルン内の別名。中学卒業後,オランダの鉄道会社に勤務,早くから労働組合活動に入り,1914年オランダ領東インド (現インドネシア) でオランダ人社会主義者を中心とする東インド社会民主主義協会を組織,19年オランダ当局によりインドネシアから追放されて帰国。 20年7~8月モスクワで開かれたコミンテルン第2回大会で民族・植民地問題委員会書記をつとめ,V.レーニンのテーゼを支持した。 21年中国駐在コミンテルン代表に任命され,6月上海租界で陳独秀らと接触し,7月中国共産党一全大会に出席。 12月桂林に北伐軍の大本営を訪れて孫文に会見し,孫文にソビエト・ロシアの現状を説明するとともに,国民党の労働者,農民を包含する党への改組,軍官学校の創設,国民党と共産党の提携を進言し,孫文を国共合作に踏切らせる契機をつくった。 22年8月杭州で開かれた共産党中央委員会総会に出席して,共産党員の国民党加入を決定させた。 23年6月の共産党三全大会にも出席し,この大会で国共合作方針が決定された。のちオランダに帰り,コミンテルンのオランダ代表となったが,共産党を離れ,下院議員となり,第2次世界大戦中ナチスに殺された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マーリン」の意味・わかりやすい解説

マーリン
まーりん
Maring
(1883―1942)

オランダの社会主義者、革命家。本名はスネーフリートHendrikus Josephus Franciscus Maria Sneevliet。社会民主労働党員を経て、1913年植民地ジャワに赴く。社会主義運動に従事し、1914年、同志とともにインドネシア共産党の前身である東インド社会民主同盟を結成した。1918年植民地政庁に追放されて当時のソ連に渡り、さらに中国に赴いて第一次国共合作の実現に大きな役割を果たした。またマーリンの名で、第2回コミンテルン大会に出席して植民地問題を論じたが、のちにコミンテルンと対立した。第二次世界大戦中、ドイツ占領軍に銃殺された。

[栗原福也]

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20世紀西洋人名事典 「マーリン」の解説

マーリン
Maring


1883 - 1942
オランダの革命家。
本名Hendrikus Josephus Franciscus Maria〉 スネーフリート〈Sneevliet。
社会民主労働党員を経て、1913年ジャワに赴く。社会主義運動に従事し、’14年東インド社会民主同盟を同志とともに結成。’18年植民地政庁に追放され、ソ連を経て、中国に渡り、第一次国共合作の実現に大きな役割を果たした。又、マーリンの名で第2回コミンテルン大会に出席し、植民地問題を論じたが、その後コミンテルンと対立。第二次大戦中ドイツ占領軍に銃殺される。

出典 日外アソシエーツ「20世紀西洋人名事典」(1995年刊)20世紀西洋人名事典について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「マーリン」の解説

マーリン
Hendrik(Hendricus) Maring (本名 H.J.F.M. Sneevliet)

1883~1942

オランダの革命家。1910~20年代,インドネシア,中国,オランダで共産主義活動に従事。その後オランダに帰国し,33~37年下院議員。ナチスに銃殺された。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のマーリンの言及

【ロールス・ロイス[会社]】より

…各地での自動車レースで優秀な成績を収めたロールス・ロイス社の自動車の評判は高まり,とくに07年から製作された名車〈シルバー・ゴースト〉によって名声が確立された。第1次大戦を契機に航空機用エンジンの分野に進出,とくに34年に開発した〈マーリン〉は優秀なエンジンとして有名であった。またこのころは,航空機用エンジンメーカーへと脱皮していく時期でもある。…

【アーサー王伝説】より

…12世紀のジェフリー・オブ・モンマスのラテン語による《ブリテン列王史》は,この伝説化した偉大な王としてのアーサーの生涯を記した最初の重要な作品である。魔法使いマーリンの力で,ブリテン王ウーゼル・ペンドラゴンはコーンウォール公に化け,公の夫人イグレーヌと同衾し,アーサーが誕生する。アーサーは宝剣エクスカリバーを得てブリテン王となり,ギネビアと結婚,諸国を平定して,ローマ遠征の途につく。…

※「マーリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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