日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミュア」の意味・わかりやすい解説
ミュア
みゅあ
Edwin Muir
(1887―1959)
イギリスの詩人、批評家。父はオークニー本島の賃貸農場で働く農夫で、一家は転々とし、14歳のときグラスゴーに移る。やがて父と2人の兄と母を次々と病気で亡くし、さまざまな工場で働き、辛酸をなめる。30歳ごろロンドンに出て、1918年、女子カレッジの講師ウィラ・アンダーソンに出会い、翌年結婚。1921年から夫妻でヨーロッパ各地を放浪し、詩を書き始める。1925年ロンドンに帰り、夫妻でドイツ文学の翻訳を手がけ、カフカの小説の決定訳を出す。第二次世界大戦後、1948年2月のチェコ政変までプラハに住み、その後英国文化振興協会所長としてローマに赴き、ローマ・カトリックに傾斜する。1950年スコットランドに帰り、晩年はケンブリッジ郊外に住む。その詩は静かな調子のなかにも鋭い現代的感覚が光り、1950年代の若い詩人の注目を浴びた。優れた『自伝』(1954)のほか、『小説の構造』(1928)、『詩の領域』(1962)などがある。
[羽矢謙一]
『福田陸太郎・鍵谷幸信編『現代アメリカ・イギリス詩人論』(1972・国文社)』▽『佐伯彰一訳『小説の構造』(1954・ダヴィッド社)』