日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミルスタイン」の意味・わかりやすい解説
ミルスタイン(César Milstein)
みるすたいん
César Milstein
(1927―2002)
分子生物学者。アルゼンチンのバイア・ブランカに生まれる。1952年ブエノス・アイレス大学自然科学部を卒業、同大学院で1957年に博士号を取得した。翌1958年にケンブリッジ大学に留学、F・サンガーの指導のもとで、1960年には二つ目の博士号を取得した。アルゼンチンに帰国して国立微生物研究所に勤務したが、1963年ふたたびケンブリッジ大学に戻り、分子生物学研究所の研究員となり、1983年には同所のタンパク質・核酸化学部門の部長に就任した。
抗体である免疫グロブリンの研究に取り組み、細胞融合の技術を用いて、その構造を詳しく調べあげた。やがて彼のもとにG・J・F・ケーラーが留学してくると、共同研究を開始した。二人は特定の抗原とただ1種類のみ結合する抗体をつくる方法の開発を目ざし、骨髄腫(こつずいしゅ)細胞とリンパ球との細胞融合から、目的とするモノクローナル抗体を発見し、1975年に発表した。その後も技術改良を行い、モノクローナル抗体の大量作製法を完成させた。この業績により、1984年にケーラーとともにノーベル医学生理学賞を受賞(同時受賞は「免疫系の発達と制御の特定性に関する理論」を確立したN・K・ヤーン)。
[編集部]
『石田寅夫著『ノーベル賞からみた免疫学入門』(2002・化学同人)』