改訂新版 世界大百科事典 「ムシトリナデシコ」の意味・わかりやすい解説
ムシトリナデシコ
sweet william catchfly
Silene armeria L.
花壇などで栽培され,日本各地で野生化しているナデシコ科の一年草。茎の粘液物に小さな虫が粘着すると考えられて,この和名がつけられた。茎は基部から直立して,高さ30~60cm,葉腋(ようえき)から枝を出す。茎の上部や花序の節の少し下は粘液物を出し,褐色を帯びる。葉は長楕円形から披針形で,長さ5~10cm。6~8月に,茎や枝の先に密な集散花序をつける。萼は筒になって伸び,長さ約1.5cm。花は直径約1cm,濃い桃色,花弁は5枚で先は浅くへこむ。おしべは10本,花柱3本。ヨーロッパ中南部原産で,日本へは江戸時代末に入った。
サクラマンテマS.pendula L.はフクロナデシコともいい,地中海沿岸の原産で日本へは明治時代中ごろに入った。茎は高さ20~40cmで,葉は柄があり卵形,全株に白毛がある。5~6月に,直径1.5cmほどの桃色の花を,茎や枝の先の大きな花序につける。
執筆者:三木 栄二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報