ムーアの法則(読み)むーあのほうそく(英語表記)Moore's law

翻訳|Moore's law

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムーアの法則」の意味・わかりやすい解説

ムーアの法則
むーあのほうそく
Moore's law

半導体集積度に関する経験則に基づいた将来予測インテル社の共同創設者であるムーアGordon E. Moore(1929―2023)が、フェアチャイルド・セミコンダクター社Fairchild Semiconductor在籍時の1965年に、エレクトロニクス・マガジン誌Electronics Magazineに出した論文で示したとされる。

 その論文では、集積回路で使われるトランジスタ数が、1959年以降、1年間で倍増していることに着目。その状況が維持され、10年後の1975年には約6万個の素子が集積回路に載るだろうと予測し、その予想どおりの展開がみられた。また、1975年になって、さまざまな要因から進行が鈍化していることに気づき、その後の予測を2年で2倍になると修正した。この予測が本来のムーアの法則とされている。最初にこのようによんだのはムーア自身ではなく、カリフォルニア工科大学教授のミードCarver A. Mead(1934― )であった。

 インテルによると、1971年に発表した4004マイクロプロセッサートランジスタの数2300個から、2008年のCore i7(コアアイセブン)プロセッサーの7億7400万個になるまでの間に、約25か月ごとに2倍の割合で増えてきており、ムーアの法則をほぼ実証している。

 コンピュータ性能向上の指針として、1年半(18か月)で倍増するという経験則をムーアの法則とする記述も多くみられるが、ムーアはそのような予測をしていない。ムーア自身は、インテル社の幹部だったハウスDavid Houseによる「コンピュータの性能が18か月ごとに2倍になる」という予測と混同したものではないかと指摘している。

 いずれの場合も理論や技術によって実証されたものではないが、現実の推移とほぼ合致しているため、広く用いられている。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ムーアの法則」の意味・わかりやすい解説

ムーアの法則
ムーアのほうそく
Moore's law

集積回路において,シリコンチップあたりのトランジスタ数(集積度)が毎年 2倍になるというアメリカ合衆国の技術者ゴードン・E.ムーアの予測。ムーアは 1965年,単一チップ上に 64個程度であったトランジスタ数が,10年後の 1975年には 2の 10乗倍,つまり約 1000倍の 6万5000個程度になるだろうという予測を "Electronics"誌に掲載して話題になった。その予測は当時の半導体の集積技術の加速度合いに基いたものであったが,のちに加速はやや鈍り,ムーアはトランジスタ数が 2倍になる期間を 2年に修正した。しかし,集積度が指数的に増加するという状況の本質はとらえていた。半導体の集積度の加速はいつか頭打ちになるという見方がこれまで何回も取りざたされたが,たび重なる技術革新によってこの法則は続いてきたとされている。近年は,数十nmスケールでの 3次元LSI集積化技術(→3次元回路素子)の研究が進み,2010年頃になると,単一チップあたりのトランジスタ数は十億個をこえ始めた。他方,こうした微細化技術によるトランジスタの集積度がコンピュータの性能の指標として適切かどうかについては議論がある。

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