翻訳|metropolis
各種の都市的機能が広い地域を支配し,その下部に多くの中小都市を従属させているような都市をいう。広域中心都市,国家都市,世界都市などとも呼ばれ,また規模の大きいことから巨大都市などと呼ぶことも多い。都市の規模(人口集積)が大きくなると,都市内部では地域分化が明瞭になり,都市部の夜間人口は著しく減少し,昼間人口が増大する。その昼間人口を供給するのは都市周辺部の住宅地区と都市の外側にある近郊地帯や衛星都市である。都市の外縁地域で都市の影響の及ぶ範囲あるいは中心都市の活動を支えている地域,すなわちメトロポリスとその支配領域をメトロポリタンリージョン(大都市地域)とかメトロポリタンエリア(大都市圏)と呼ぶ。またメトロポリスの都市化が進み,都市圏内の結合関係が強化され,都市圏が拡大することを大都市地域化(メトロポリタニゼーション)と呼んでいる。
基盤地域の人口密度にもよるが,大都市の規模は人口10万程度から数百万までと幅が広い。さらにそれらの大都市圏となると大きなものは1000万人以上にも達し,50kmから100kmの半径をもつようになる。都市内部が機能地域に分化しているのと同様に,大都市圏内部にも階層構造や地域分化が認められる。巨大都市の都市圏内部には多くの都市が星雲状に存在し,それぞれがまた一つ一つの都市圏を形成し,その構造は複雑になる。集心,集心的離心の現象はこのような所で典型的にみられる。
中心の大都市の都市化の進展により大都市圏の拡大・高密度化が進む。日本では東京大都市圏,大阪大都市圏,名古屋大都市圏が国家中心で,札幌,仙台,広島,福岡の諸大都市圏は広域中心となり,明瞭な階層性を示している。これは中心になる大都市のもつ中枢機能の性格によっている。
執筆者:田辺 健一
1926年製作のドイツ映画。フリッツ・ラング監督作品。1924年にアメリカを訪れたラングが,ニューヨーク港の船上からマンハッタンの摩天楼を望見してアイデアを得たという21世紀の未来都市の物語である。700万マルクともいわれるドイツ映画空前の巨費を投じ,2年がかりで完成された4時間を超える超大作で,撮影所のステージのなかに摩天楼や地下工場などを設計したオットー・フンテの表現主義的なセットの造型技術と,レンズのわきに鏡を備えつけてミニチュアを拡大し,実物とセットを合成したオイゲン・シュフタンの特殊撮影技術(〈シュフタン・プロセス〉と呼ばれた)が評判になったが,最後に独占資本家と労働者の代表が和解して握手するという労資協調をうたう主題は,〈図式的なスペクタクル〉〈映画技法的には比類なき成功作だが人間的見地からは恐るべき無知を暴露した駄作〉(ジークフリート・クラカウアー)と批判された。イギリスとアメリカでは5巻分がカットされたプリントが公開され,H.G.ウェルズは〈愚劣きわまる〉と酷評している(それに対し,コナン・ドイルはこの映画に熱狂したと伝えられる)。ドイツで封切られた当時,田舎町でこの映画を見たヒトラーとゲッベルスは,ナチが政権をとったらラングに〈ナチス映画〉をつくらせたいと話しあったという話も伝えられている。ラング自身は後年,失敗作であったことを認めている。なお,70年代に入って〈アメリカ版〉が,電子音楽のサウンド・トラック入りで,おりからのSF映画ブームに乗って再公開された。
執筆者:柏倉 昌美
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もとギリシア語で植民者の母都市・母国を意味したものが、政治・宗教・商業などなんらかの点で地域の中核となっている都市、さらにはロンドン、ニューヨーク、東京のように最大級の巨大都市をいうようになった。しかしアメリカではかならずしも巨大都市のみでなく人口5万程度の中小都市をいう場合もあり、メトロポリスの規模は一定したものではないが、一国または一地方の首都ないし機能的中心都市を意味することは確かである。大都市地域が連接した巨帯都市を意味するメガロポリスとは機能的にも規模としても異なる。
[高野史男]
『木内信蔵他編『講座都市と国土(1)大都市地域』(1971・鹿島出版会)』▽『阿部和俊著『日本の都市体系研究』(1991・地人書房)』
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… 第1次世界大戦直後の19年,ドイツ表現主義映画の最初の傑作として名高いR.ウィーネ監督の《カリガリ博士》が,マッド・サイエンティスト(狂った科学者),その実験から生まれた怪物,怪物に襲われる美女という〈怪奇映画〉のパターンを創造した。さらに,フリッツ・ラング監督の《メトロポリス》(1926)は,表現派というよりも初の本格的SFスペクタクルであり,ロボットを作る実験室のエピソードや,バベルの塔建設の幻想などを,〈シュフタン・プロセス〉による特殊効果を駆使して描いた壮大な作品だが,興行的な失敗から製作会社のウーファを破産寸前に追い込んだ。当時これを見て愚の骨頂とこきおろしたウェルズは,それから10年後,〈ロボット労働者や超高層建築といったがらくたのイメージを払拭(ふつしよく)した真の未来映画〉の範を示すべく,自作の小説《来るべき世界Things to Come》(1933)をみずから脚色し,W.C.メンジース(1896‐1957)が監督して,SF映画史に残る作品となったが,これまた興行的には敗退した。…
…その後ヨーロッパの諸都市の地下鉄が同じ名称(略して〈メトロ〉)を採用したため,いつか〈メトロ〉とは〈地下〉を意味するように誤り伝えられてしまった。フリッツ・ラング監督によるドイツのSF映画《メトロポリス》(1927)が,地上と地下の都市の階級的対立を映像化し,この傾向はますます強まった。本来地下室とは,個人の家の酒蔵や物置にせよ,城の牢獄にせよ,上にある建物の付属私有空間であり,縦方向の行き来はできても,地下室相互の横の交通は不可能(秘密通路によって可能となるごくまれな場合を除いて)なはずであった。…
※「メトロポリス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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