改訂新版 世界大百科事典 「都市圏」の意味・わかりやすい解説
都市圏 (としけん)
都市機能には,商業,工業,文化,行政など種々の機能があるが,それら諸機能が周辺地域に影響を与える範囲をいう。単一の機能に着目して,その都市の勢力や影響の及ぶ範囲をみた場合,商圏,医療圏,通勤・通学圏などと呼ばれるが,それらを総合したものが都市圏である。都市勢力圏または都市影響圏とも呼ばれる。さらに後背地(ヒンターランド)もいまは同意義に用いられる場合が多い。
都市圏とは都市が主体となり,ややもすれば都市が周辺の農村地域を従属させているとの意が強いというので,都市と周辺の農村地域を同等に扱い相互依存,補完という意味で,補完地域,都鄙(とひ)共同圏などの語が用いられている。また住民の側に立ち,その生活する範囲という意味で生活圏という語も用いられている。それらは観点やアプローチが異なるのであるが,事象,構造などは都市圏とまったく同じである。
さらに,アメリカ合衆国では,人口5万以上の都市周辺地域の農村で,非農家が多く,中心地への通勤者が多くて,その中心都市との結びつきが強い場合,その地域と中心都市とを併せて標準都市統計地区standard metropolitan statistical area(SMSA)という行政単位をセンサスで用いているが,このSMSAも都市圏と同義と考えてよい。なおイギリスでは,関係が深く市街地が接している都市群を併せてコナーベーション(連接都市)と呼んでいるが,これも都市圏と同じと考えてよい。一般に,都市の行政的境界を超えて市街地が拡大した場合,日常生活上で結びつきの強い範囲をメトロポリス(大都市),また大都市圏(メトロポリタン地域)と呼んでいるが,この場合も都市圏と同義である。この範囲を日本の都市でみると,東京は約50km,大阪は約40km,名古屋は約30km(各都市の中心からの距離)といわれている。
都市圏の範囲は,何を指標とするかによって異なるが,一般には通勤・通学や買物によく出かける日常生活上の結びつきの強い範囲を指す。しかし,卸売機能や事務管理機能など影響力の強い機能では,都市圏の範囲も広くなり,この観点からの都市圏も広義には含まれる。首都圏とは,首都東京の影響力の及ぶ範囲を行政側からみた広義の都市圏とみることができる。なお第三次全国総合開発計画でいわれている定住圏構想や,地方生活圏,広域市町村圏など行政側で用いられているものも,実質上都市圏と異なるところはない。
執筆者:沢田 清
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報