改訂新版 世界大百科事典 「モリツバメ」の意味・わかりやすい解説
モリツバメ (森燕)
スズメ目モリツバメ科の鳥の1種,またはモリツバメ科の鳥の総称。モリツバメArtamus leucorhynchus(英名white-breasted wood-swallow)は全長約17cm。頭頸(とうけい)部と腰以外の背面は灰黒色で,背中は少し褐色を帯び,腰,上尾筒,胸以下の下面は白い。雌雄は同色。くちばしはじょうぶで,基部青白色,先が黒い。脚は青灰色。マレー諸島およびフィリピンからオーストラリア,ニューカレドニア,フィジー諸島まで分布する。日本では琉球諸島の西表島で迷鳥が1回観察された。マングローブ林,ジャングルの林縁,農耕地などにすみ,しばしば電線に並んでとまって休んでいるのを見かける。繁殖期以外は10~30羽の群れをつくっている。翼が長くとがっているので,飛び方はきわめて優美で,大型のアマツバメ類のように,ときどき羽ばたくだけで,大きく旋回しながらゆっくりと長い滑空をする。しかし,アマツバメ類と違って,長い間飛びつづけることは少なく,しばらくするととまり場所に戻って休む。食物は飛んでいる昆虫類だが,ヒタキ類のように枝の先にとまって獲物が近づくのを待ち,飛び出してとらえる。このため,アマツバメのような大きな口はもっていない。幹の裂け目や瘤になったところの上に粗雑な巣をつくり,1腹3~4個の卵を産む。卵はクリーム色の地に褐色の斑点があり,雌雄とも抱卵,育雛(いくすう)をする。飛びながらチェッ,チェッと聞こえる鋭い声を出す。
モリツバメ科Artamidae(英名wood-swallow)は1属9~10種よりなり,ニューギニア・オーストラリア地方を中心に分布している。羽色は一般に背面が青灰色か暗褐色,下面は白色か灰色だが,オーストラリアのタスマニアに分布するマミジロモリツバメA.superciliosusは胸以下が美しい栗色である。
執筆者:森岡 弘之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報