改訂新版 世界大百科事典 「スジグロシロチョウ」の意味・わかりやすい解説
スジグロシロチョウ
Artogeia melete
鱗翅目シロチョウ科に属する昆虫。東アジアにふつうのチョウで,日本では全国の山地から市街地まで広く分布する。翅の開張は5.2~6cm。飛翔(ひしよう)中はモンシロチョウと混同されやすいが,後翅裏面の翅脈が黒く(名の由来),その基部に黄色の丸い紋があることで容易に区別しうる。雄は強烈な香気を発する。春の出現期は各地ともサクラの開花期とほとんど一致し,モンシロチョウと混飛するが,真夏以降はモンシロチョウほどふつうでなくなる。また,モンシロチョウが明るい,開けた環境を好むのに対し,本種はやや日陰を好む。このため,空地や草地の少ない市街地では春はモンシロチョウが少なく本種が多い。幼虫はアブラナ科の野生植物を栽培種より好む。1970年ころから広く都市部に増えてきたショカツサイは,秋から初夏まで葉が得られるので,スジグロチョウも増えている。
近似種に,北半球に広く分布するエゾスジグロシロチョウA.napiがあり,やはり雄は香気を発する。幼虫はアブラナ科の野生植物を好む。北海道産は小型で白みが強く,ヨーロッパ産のものに近く,亜種A.n.nesisとされ,本州以南のものは大型で,スジグロチョウに酷似し,亜種A.n.japonicaとされる。A.n.japonicaはハタザオ類のように,あまりふつうでない植物を強く選好するため,それらの乏しい季節はさなぎが休眠するか,あるいは成虫の移動によるかしてまれとなる。いずれの種も環境によって年2~4回程度発生する。
執筆者:高倉 忠博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報