日本大百科全書(ニッポニカ) 「モーリス・ジー」の意味・わかりやすい解説
モーリス・ジー
もーりすじー
Maurice Gee
(1931― )
ニュージーランドの小説家、児童作家。北島ファカタネ生まれ。オークランド大学卒業。教員、臨時仕事、図書館員の仕事の合間にも、執筆を手がけ、短編小説『ビッグ・シーズン』(1962)や『特別な一輪の花』(1965)ほか出版。1976年、45歳のとき創作に専念。2年後、イギリスのジェームズ・テート・ブラック・メモリアル賞、翌年には、ニュージーランドの大方の文学賞受賞作となった『プラム』(1978)を出版。本書は、1890年代より約半世紀余、二つの世界大戦、恐慌を経験するニュージーランドの片田舎の長老派牧師、ジョージ・プラムの1890年代から1949年までの信仰生活を描いたもの。それは、過酷な歴史にかかわり試練をうける、精神史であるともいえる。二部『メグ』(1981)は、プラム家の末娘が主人公となり父の経験が娘の視点で、第一次世界大戦から1950年代まで再度吟味され語られる。続く『ソール・サバイバー』(1983)は、メグの息子ゲイのレイモンド・ソールの日記形式の作品である。ニュージーランド文学の伝統的形式である、日記文学、詩、短編小説を駆使して生まれた、もう一つのニュージーランド史ともいわれ、称賛された。1995年に『プラム三部作』として再版されるまで、英米でも版を重ねた。三部作執筆中も、数冊の子供向けの本を執筆するなど、90年代に入っても創作の意欲は尽きない。
[古宇田敦子]