日本大百科全書(ニッポニカ) 「モーロア」の意味・わかりやすい解説
モーロア
もーろあ
André Maurois
(1885―1967)
フランスの作家、伝記作家、評論家。本名エミール・エルゾーグEmile Herzog。ノルマンディーのエルブフの織物工場主の息子。ルーアンのコルネイユ校に在学中、哲学者アランの講義を聴き、終生その影響を受けた。同校を優秀な成績で卒業したが家業に携わり、第一次世界大戦にイギリス軍との連絡将校として従軍。その体験からの小説『ブランブル大佐の沈黙』Les Silences du Colonel Bramble(1918)で文壇に出た。さらに『オグラディ博士の発言』(1922)、『風土』Climats(1928)、『血筋の輪』(1932)などにより心理小説作家としての評価を得た。一方「小説化された伝記」とよばれる『シェリー伝』(1923)、『バイロン伝』(1930)などを発表し好評を博した。第二次大戦後には『ジョルジュ・サンド伝』(1952)、『ユゴー伝』(1954)、『デュマ伝』(1957)、『バルザック伝』(1965)など多数の伝記を執筆し、そのいずれも豊かな資料に裏打ちされ、人間の微妙な内面生活を描いている。『英国史』(1937)、『フランス史』(1947)などの通史、自伝、数多いエッセイなども残した。1938年アカデミー会員に選ばれた。
[菊池映二]
『モーロア著、谷長茂訳『わたしの人生航路』全三巻(1970・二見書房)』▽『水野成夫・小林正訳『英国史』上下(新潮文庫)』▽『平岡昇他訳『フランス史』上下(新潮文庫)』