ヤマシャクヤク(読み)やましゃくやく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤマシャクヤク」の意味・わかりやすい解説

ヤマシャクヤク
やましゃくやく / 山芍薬
[学] Paeonia japonica (Makino) Miyabe et Takeda

ボタン科(APG分類:ボタン科)の多年草。根は赤みを帯び、肥厚して肉質となる。茎は高さ30~50センチメートル、基部に鱗片(りんぺん)状に退化した根出葉がある。茎葉は2回3出複葉、小葉は楕円(だえん)形で毛はない。4~6月、茎の先に径約5センチメートルの白色花を1個ずつ上向きに開く。萼片(がくへん)は3枚で緑色花弁は5~7枚あって、半開の状態にとどまる。果実は袋果で、秋に裂開し、紅色で不稔(ふねん)の小さな種子と大きな黒青色の成熟した種子が露出する。落葉広葉樹林の林内や林縁に生え、関東地方以西の本州から九州、および朝鮮半島に分布する。和名は、日本で古くから栽培されるシャクヤクに似ており、日本の山地に自生することによる。シャクヤクは中国や東シベリアなどに分布する別種P. lactiflora Pall. (P. albiflora Pall.)で、全体が大きく、葉に光沢がある。

[門田裕一 2020年5月19日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヤマシャクヤク」の意味・わかりやすい解説

ヤマシャクヤク(山芍薬)
ヤマシャクヤク
Paeonia japonica

ボタン科の多年草。朝鮮半島,日本に分布し,本州中部より西の山地に生える。地下茎は横に伸び,肥厚する。茎は 30~50cmで直立し,基部に数個の鱗片葉がある。茎のなかほどに有柄の2回3出複葉が3~4個つく。小葉は長さ 10cmほどの楕円形で,両面とも無毛,下面はやや白みを帯びる。4~6月,茎頂に白色の花を1個つける。萼は緑色で3枚,花弁は5~7枚あって丸く,花全体も平開しないでほぼ球形をなし,内部に多数のおしべと3~4本のめしべをくるみ込むように咲く。袋果は長楕円形,種子は丸くて黒色である。

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百科事典マイペディア 「ヤマシャクヤク」の意味・わかりやすい解説

ヤマシャクヤク

本州〜九州の山中の林にはえるボタン科の多年草。茎は高さ50cmに達し,分枝せず3〜4個の葉をつける。葉は大型で,2回3出複葉。4〜6月,茎頂に径4〜5cmの花を1個上向きに半開する。花弁は5〜7枚,白色。近縁ベニバナヤマシャクヤクでは淡紅色の花を開く。
→関連項目シャクヤク

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世界大百科事典(旧版)内のヤマシャクヤクの言及

【シャクヤク(芍薬)】より

…白芍は滋養補血,鎮痙(ちんけい)・鎮痛効果があり,他の生薬と配合して月経調節,胃けいれんの疼痛,慢性胃炎,肝臓疾患,リウマチ性関節炎などに,赤芍は浄血解毒の効があり,他の生薬と配合して婦人科疾患,打撲傷などの内出血,神経痛などに用いられる。 ヤマシャクヤクP.japonica Miyabe et Takeda(イラスト)は日本・朝鮮・中国に自生し,花は直径4~5cm,白色,花弁は5~7枚。小葉の基部は葉柄にそって伸びない。…

【石灰植物】より

…石灰岩地帯にはほとんど分布しない植物を嫌石灰植物calcifugeというのに対して,好石灰植物ともいう。分布のしかたからみて,石灰植物にはイチョウシダ,クモノスシダのように石灰岩地帯には広く分布するが,それ以外ではみられず,石灰岩地帯に限られるものと,イワシデ,ヤマシャクヤクのように石灰岩地帯に多いが他の母岩にもみられるものがある。石灰植物のうちトダイハハコ,シライワコゴメグサなどは近縁植物とは変種程度の差しかなく石灰岩地帯で比較的新しく分化したものと考えられるが,チチブミネバリのように近縁植物がみられないものは分化が古いと考えられる。…

※「ヤマシャクヤク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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