ヤマモガシ(英語表記)Helicia cochinchinensis Lour.

改訂新版 世界大百科事典 「ヤマモガシ」の意味・わかりやすい解説

ヤマモガシ
Helicia cochinchinensis Lour.

ヤマモガシ科常緑樹で,ふつう樹高数mだがときに樹高15m,直径80cmにも達する。葉は互生し,葉柄6~15mm,葉身はやや革質の楕円形~長楕円形,長さ8~14cm,幅1.5~5cmで,全縁かときに上部に不規則な粗鋸歯をもつ。7~9月,葉腋ようえき)に生じた総状花序に多数の白色花をつける。花被片は線形で4枚,開花時に反曲し,上方内側に1本ずつおしべをもつ。果実は長さ12mmの楕円球形の液果で,紫黒色に熟する。本州東海地方以西,四国,九州,琉球,台湾,中国南東部,インドシナ分布する。葉や果実などがややホルトノキ(別名モガシ)に似るので,ヤマモガシという。

 ヤマモガシ科Proteaceaeは約60属1000種からなり,ほとんどは木本で,まれに草本を含む。オーストラリア南米,アフリカなど南半球の乾燥した地域で種が最もよく分化している。花が美しいものがあり,観賞用に用いられる。オーストラリア原産のマカダミア種子は食べられるので各地で栽培される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤマモガシ」の意味・わかりやすい解説

ヤマモガシ
やまもがし
[学] Helicia cochinchinensis Lour.

ヤマモガシ科(APG分類:ヤマモガシ科)の常緑高木。高さ約10メートル。葉は倒楕円(とうだえん)状または倒卵状披針(ひしん)形で長さ5~15センチメートル、幅1.5~4センチメートル、全縁または縁(へり)の上半部にまばらな鋸歯(きょし)がある。7~9月、葉腋(ようえき)に長さ10~15センチメートルの総状花序をつくり、花柄の先に2個ずつ白色花を密に開く。花被片(かひへん)は4枚、つぼみのときは互いに接して細い管状、開花すると反転し、内側上部に各1本の雄しべをつける。液果は楕円形で長さ約1センチメートル、黒色に熟す。常緑樹林内に生え、中部地方南部以西の本州から四国、九州、沖縄、および中国、インドシナに分布する。名は、全体がモガシ(ホルトノキ科のホルトノキの一地方名)に似ており、山地に生えることに由来する。

[古澤潔夫 2020年4月17日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヤマモガシ」の意味・わかりやすい解説

ヤマモガシ
Helicia cochinchinensis

ヤマモガシ科の常緑の小高木。カマノキともいう。東南アジアの暖温帯に広く分布し,日本でも西日本の海岸付近に自生する。幹は高さ 5m内外で直立し,枝はよく分枝し,紫褐色でこんもりとした茂みをつくる。葉は互生して柄があり,革質,長楕円形で先は急にとがる。8~10月に,葉腋に総状花序を出し,短柄のある花を多数つける。花は2個ずつ1枚の包葉の内側につき花被片は白色で4枚,その上部内側におしべの葯 (やく) 4個が直接つき,花糸はない。液果は堅く,楕円形で黒熟する。この科の植物は南アフリカとオーストラリアに分布の主体があって,それぞれ多くの種があり,両地域のフロラ (植物相) の特徴をなしている。

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