日本大百科全書(ニッポニカ) 「フロラ」の意味・わかりやすい解説
フロラ
ふろら
flora
ある地域の植物の種類相をいい、植物の群落相(植生)とともに植物相の一半をなす。具体的には、ある地域の植物の種類の総目録で、「植物誌」と同義に使われる。フロラの調査は、植物の種属の分布現象研究の基礎をなすものであるが、最近では、自然環境の記録、評価、モニター(監視)としての役割も大きい。フロラの研究には、任意の地域の植物の種類を枚挙的に調査する定地的方法と、個々の植物の種類ごとの分布を調べ、それに基づいて分布パターンを類型化しようとする体系的方法とがある。
各地域のフロラを比較してその相違を明らかにし、それぞれの特徴によっていくつかの地域を区分したとき、それぞれの地域をフロラ区系(植物区系)とよぶ。こうしたリストの作成の際、ある植物の種類が生えている所を分布地点といい、地図状に分布地点を記入したものを分布図という。いろいろな植物の種類の分布図を比較すると、よく似た分布状態を示すものがあり、それを分布類型にまとめることができる。一つの分布類型に属する種類を区系要素という。たとえば、日本海沿岸の雪の多い所では、ヒメモチ、エゾユズリハ、ヒメアオキなどの種類がよく似た分布状態を示すため、それらを一つの分布類型にまとめることができる。このような分布類型を体系的にまとめたものが「植物区系区分」で、作成にあたっては、植物地域、植物地方、植物区系区、植物区系界のように階層的な区分体系が行われる。先にあげた「日本海沿岸の雪の多い所」を植物区系区分で記述すると、全北植物区系界・日華植物区系区・日本植物地方・日本海植物地域のようになる。
[大場達之]