フロラ(読み)ふろら(英語表記)flora

翻訳|flora

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フロラ」の意味・わかりやすい解説

フロラ
ふろら
flora

ある地域の植物種類相をいい、植物の群落相(植生)とともに植物相の一半をなす。具体的には、ある地域の植物の種類の総目録で、「植物誌」と同義に使われる。フロラの調査は、植物の種属の分布現象研究の基礎をなすものであるが、最近では、自然環境の記録、評価、モニター監視)としての役割も大きい。フロラの研究には、任意の地域の植物の種類を枚挙的に調査する定地的方法と、個々の植物の種類ごとの分布を調べ、それに基づいて分布パターンを類型化しようとする体系的方法とがある。

 各地域のフロラを比較してその相違を明らかにし、それぞれの特徴によっていくつかの地域を区分したとき、それぞれの地域をフロラ区系(植物区系)とよぶ。こうしたリストの作成の際、ある植物の種類が生えている所を分布地点といい、地図状に分布地点を記入したものを分布図という。いろいろな植物の種類の分布図を比較すると、よく似た分布状態を示すものがあり、それを分布類型にまとめることができる。一つの分布類型に属する種類を区系要素という。たとえば、日本海沿岸の雪の多い所では、ヒメモチエゾユズリハヒメアオキなどの種類がよく似た分布状態を示すため、それらを一つの分布類型にまとめることができる。このような分布類型を体系的にまとめたものが「植物区系区分」で、作成にあたっては、植物地域、植物地方、植物区系区、植物区系界のように階層的な区分体系が行われる。先にあげた「日本海沿岸の雪の多い所」を植物区系区分で記述すると、全北植物区系界・日華植物区系区・日本植物地方・日本海植物地域のようになる。

[大場達之]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フロラ」の意味・わかりやすい解説

フロラ
Flora

古代ローマの女神。春に植物を開花させる花の女神。オウィディウスの伝える神話によれば,彼女はもとギリシア語名をクロリスというニンフであったが,西風の神ゼフュロスにさらわれてその妻となり,花の女神の職分をこの夫から与えられたという。またあるとき彼女は,触れただけで妊娠する花をユノに与え,そのおかげでユノは,ユピテルの種によらずにマルスを生むことができたので,以後このことを記念して,春の最初の月がマルスの名で呼ばれることになったともいう。

フロラ

植物相」のページをご覧ください。

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