やら(読み)ヤラ

デジタル大辞泉 「やら」の意味・読み・例文・類語

やら[副助・並助・終助]

[副助]名詞、名詞に準じる語、副詞、活用語の連体形助詞などに付く。(疑問語を伴って、あるいは「とやら」の形で)不確かな意や、ぼかして言う意を表す。…か。「何やら降ってきた」「いつのまにやら眠っていた」「同僚とやらから電話があった」
「二番目の子を、女房どもが何と思ひ入りました―、ぜひにと望みます」〈浮・胸算用・二〉
[並助]名詞、名詞に準じる語、副詞、活用語の連体形、助詞などに付く。
どちらとも決定しがたい二つ以上の事柄並列・列挙する意を表す。「うれしいやら悲しいやら複雑な気持ちだ」
恵方ゑはうが東―、南に梅が咲く―、暦さへ持たずして」〈浮・永代蔵・三〉
事物を単に並列・列挙する意を表す。「お茶やらお花やらを習う」
「出来たとこ塩梅あんばいが悪い―、手際が悪い―で、やんやといふほどにも行かねえ」〈滑・浮世床・初〉
[終助]名詞、名詞に準じる語、活用語の連体形、助詞などに付く。(多く疑問の語と呼応して)想像を働かす意を表す。…だろうか。「いつから始まることやら」「どうしたら気が済むやら
[補説]「にやあらむ」が「にやらむ」「やらむ」「やらう」「やら」と音変化したもので、中世後期以降に用いられた。中世後期には「やらん」「やらう」と混用されていたが、近世になって「やら」に固定した。なお、の文末用法から転じて成立したもの。

やら[感]

[感]感動したり驚いたりしたときに発する語。あら。
「―、わごりょは聞こえぬ事を言はします」〈虎清狂・文荷

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「やら」の意味・読み・例文・類語

やら

  1. 〘 副詞助 〙 ( 「やらん」の変化したもの )
  2. 体言および体言と同資格の語、副詞・助詞などを受け、不確実・不定の意を表わす。
    1. [初出の実例]「頸のほどに近づきて、なににやらおどろきて恐れたる気色にて、逃げ去り給ひつる」(出典:貞享版沙石集(1283)八)
    2. 「蜻蛉釣今日は何処まで行たやら」(出典:俳諧・俳家奇人談(1816)下)
  3. ( 「…やら…やら」の形で ) 二つの事物を受け、否定の語を伴って、いずれとも不定である意を表わす。
    1. [初出の実例]「地主の桜は、〈略〉ちるやらちらぬやらあらしこそしれ」(出典:歌謡・閑吟集(1518))
    2. 「仏になって食ふやら食ねへやらしれねへっ」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二)
  4. ( から転じて ) 類似する事物を並立・列挙する場合に用いる。
    1. [初出の実例]「ふしぎなやらこわいやら、又業平といふたればなつかしいやら」(出典:浮世草子・好色万金丹(1694)二)

やら

  1. 〘 名詞 〙 語義未詳。水深の浅い泥海の意か。沼地、泥深いところの意とも。
    1. [初出の実例]「梯立の 熊来の夜良(ヤラ)新羅斧 落し入れ わし あけてあけて な泣かしそね 浮き出づるやと 見む わし」(出典万葉集(8C後)一六・三八七八)

やら

  1. 〘 感動詞 〙 感動や驚きを表わすことば。あら。
    1. [初出の実例]「やら、片方の御目は、大におはするぞと云ひけるこそ、思ひあはせられて侍れ」(出典:米沢本沙石集(1283)一)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android