ユンカー(読み)ゆんかー(英語表記)Junker ドイツ語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユンカー」の意味・わかりやすい解説

ユンカー
ゆんかー
Junker ドイツ語

プロイセンの伝統的支配階級であった騎士領所有貴族の俗称。エルベ川以東の東部ドイツ領地をもち、そこにグーツヘルシャフトを発展させるとともに、18世紀以降軍隊官僚の上層部を独占的に支配して政治的支配階級ともなった。19世紀初頭のプロイセン改革以後、領地経営は資本主義的な大農場経営(いわゆる「ユンカー経営」)に転換し、またグーツヘルシャフトに由来する身分特権も廃止されていくが、その後も地方はもとより中央の政・官界軍部勢力をもち続けた。政治的には保守主義の地盤となった社会層である。第二次世界大戦後、旧東ドイツの土地改革によって、その存立の基盤は完全に失われた。

 なお、ユンカーの語源は、古高ドイツ語のjuncherroで、貴族の若衆を意味したが、のちには軍隊や宮廷の役職名にも用いられた。プロイセンでは、ユンカーは「田舎(いなか)貴族」として多く蔑称(べっしょう)に用いられたが、ビスマルクのように自らそれを誇称した者もいる。

[坂井榮八郎]

『ハンス・ローゼンベルク著、大野英二・川本和良・大月誠訳『ドイツ社会史の諸問題』(1978・未来社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ユンカー」の意味・わかりやすい解説

ユンカー
Junker

ドイツの若い貴族をさす高地ドイツ語 Junc-hêrreに由来する言葉で,近代に入ってからは,とりわけエルベ川東方の農場領主をさすにいたった。エルベ川東方では,15~16世紀に領主の直営地が拡大され,領主裁判権も強化されて,東方植民の当初には自由だった農民が農奴の地位に転落した。この領主をグーツヘルというが,ユンカーとはこのグーツヘルの俗称であり,19世紀にはプロシアの内政改革が問題となって以来一般化した用語である。東部ドイツ全般にみられるが,特にプロシアはユンカーが大きな勢力をもった国として名高い。 1807年の農民解放以後その実権制約が加えられ,またブルジョアが領地を購入してユンカーに転化する傾向が増大したものの,プロシアの高級将校,高級官僚は彼らによって占められ,長い間プロシア社会の基幹をなし,その存在は 20世紀のドイツをも特色づけていた。 (→グーツヘルシャフト )

ユンカー
Junker, August

[生]1870.1.21.
[没]1944.1.5. 東京
日本で活躍したドイツのバイオリニスト,指揮者。ケルン音楽学校を卒業後,J.ヨアヒムに師事,シカゴ交響楽団員を経て,1899年東京音楽学校教授として来日,1912年までバイオリンオーケストラを指導した。帰国後アーヘン音楽学校の教授となったが,34年再び来日し,日本の楽壇を育てた。

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