EU(ヨーロッパ連合)の公益促進のために活動するEUの中心的な機関。一般に欧州委員会とよばれる。本拠地はブリュッセル。立法機関と行政・執行機関の両面をもつ。立法機関としては、EUの立法案を提出する(法案提出権は欧州委員会がほとんどの立法事項について独占している)。行政・執行機関としては、採択されたEU立法などEU法全般がEU各国で適切に実施されるよう監督し、不実施国をEU裁判所に訴える。またEU競争法など一部のEU法は自らも実施にあたる。さらに域外国や国際機関との国際条約の交渉も、閣僚理事会の監督を受けつつ欧州委員会があたる。
欧州委員会は加盟国から1名ずつの委員で構成し、そのなかに委員長1名、副委員長(若干名)を含む(2018年時点で計28名)。委員は各国から独立して行動し、EUの公益のために職務に専念する義務がある。
委員長は、外交・安全保障を担当するEU上級代表(High Representative)を除き、各委員の職務の割り振りや変更ができ、また非行等がある場合、個々の委員を解任できる。各委員は、担当の職務を、欧州委員会の政策分野別に組織された官僚機構の補佐を受けて実行する。
EU上級代表は特殊な職であり、欧州委員会の副委員長(外交担当)であると同時に、外務理事会の常任議長を務める。しかも上級代表の補佐機関は、欧州対外活動庁European External Action Serviceという別の組織である(欧州委員会の職員、閣僚理事会事務局の職員、各国外務省出向者の三者で組織される)。上級代表の解任は、欧州委員会委員長の同意を得て欧州理事会(ヨーロッパ理事会)が行う。
欧州委員会の全委員(上級代表を含む)の任期は5年である。5年ごとの欧州議会(ヨーロッパ議会)選挙の結果を考慮して任命される。委員の任命手続は二段階に分かれる(ただし上級代表を除く)。第一段階では、欧州委員会の委員長候補を欧州理事会が1名指名し、欧州議会が承認する。第二段階では、委員長以外の委員候補(上級代表を除く)を各国政府の推薦をもとに閣僚理事会と委員長候補が合意して選定し、委員候補全員を欧州議会が承認すれば、欧州理事会が正式に一団を任命する。他方、上級代表は、欧州理事会が欧州委員会委員長の同意を得て指名し、他の委員とともに第二段階最後の欧州議会による承認を受けて任命される。
2014年以降、以上の手続の運用に新しい動きがみられ、第一段階の委員長指名について、欧州議会の影響力を増す実務慣行が生まれつつある。2014年の欧州議会選挙で各政党が欧州委員会委員長の候補者を掲げて選挙戦に臨み、選挙の結果、多数派となった政党が掲げた委員長候補しか欧州議会は承認しない戦術に出た。これを筆頭候補指名戦術Spitzenkandidaten(ドイツ語)という。欧州理事会もこれを容認し、多数派政党が掲げた候補を最初から指名した。欧州議会は、欧州委員会を不信任決議により総辞職させる権利をもつこととあわせて、任命から総辞職までしだいに欧州委員会に対する政治的統制力を強めている。
[中村民雄 2018年6月19日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ヨーロッパにおける三つの超国家的な地域統合機構であるヨーロッパ経済共同体(EEC),ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC),およびユーラトム(ヨーロッパ原子力共同体EURATOM)の総称。ECと略称するが,1992年のマーストリヒト条約によって誕生したヨーロッパ連合(EU)の一部となった。3共同体の立法機関である理事会と執行機関である委員会が,1965年4月に調印された融合条約によって,単一のEC理事会(通称は閣僚理事会)と単一のEC委員会に統一されることになり,67年7月1日を機に3共同体は機構的に統一され,以後ヨーロッパ共同体と呼ばれることになった。…
…第2,第3の柱は超国家的ではなく,構成国の全会一致を基本とした政府間協力にとどまっている。制度的には,EC理事会とヨーロッパ政治協力外相会議はヨーロッパ理事会に統一され,EC委員会も名称がヨーロッパ委員会に変更された。 さらにEUでは3度目の条約改正作業が行われ,その成果は1997年10月2日に調印されたアムステルダム条約となった。…
※「ヨーロッパ委員会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加