日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨーロッパ理事会」の意味・わかりやすい解説
ヨーロッパ理事会
よーろっぱりじかい
European Council
EU(ヨーロッパ連合)の全政策領域について、大局的見地から指針を示す首脳級の機関。一般に欧州理事会とよばれる。この欧州理事会と閣僚理事会Council of the European Unionは混同しやすいが、前者は首脳級、後者は閣僚級の会合であり、別である。
欧州理事会は、EU加盟諸国の首脳(国家元首または政府の長)、欧州委員会(ヨーロッパ委員会)委員長および欧州理事会理事長で構成する。議長は欧州理事会理事長が務める。半年に2回、合計年4回の定例会合があり、ほかにも理事長は臨時会合を必要に応じて招集できる。
欧州理事会は、大局的見地からEU全領域の運営方針を示し、また特定事項についてのEUとしての行動を示す。実務慣行では、このほかにも閣僚理事会で決着がつかなかった事案について政治決着をつける場としても利用される。立法には関与せず、欧州理事会が示した内容が立法措置を要する場合は、欧州委員会・閣僚理事会・欧州議会(ヨーロッパ議会)の三者が関与して立法する。ただし、共通外交・安全保障・防衛政策上の措置は、欧州理事会の指針に基づき、閣僚理事会が具体的な措置を決定する。
欧州理事会の意思決定は、全会一致で行うものと定められているが、実務慣行では投票に訴えずコンセンサスで決定することがほとんどである。
なお、欧州理事会の理事長は、リスボン条約で新設された職位である。EU大統領と訳されることもあるが、アメリカの大統領などとは異なり、行政権をいっさいもたない。理事長は、欧州理事会を招集し議長を務め、対外的にはEU外交の顔として世界の首脳級会合でEUを代表できるだけである。
[中村民雄 2018年6月19日]