日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラップランド」の意味・わかりやすい解説
ラップランド
らっぷらんど
Lapland
スカンジナビア半島北部、大半が北極圏に入るサーミ人(ラップ人)の居住地域。ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアの4か国領にまたがる。西部は古い褶曲(しゅうきょく)山脈で、ケブネカイセ山(2123メートル)など、氷河を頂く高峰があるのに対し、その東方はボスニア湾やイナリ湖盆へと低くなる高原地帯である。北極海沿岸部は、その緯度のわりにはきわめて温暖で、一部には農牧業もみられるが、豊富な水産資源を目ざして早くから定住が進んだ。内陸高原地帯は寒冷なツンドラ(永久凍土帯)で、南ではマツ、カバなどが多くかつ大きくなる。サーミ人はトナカイ飼育、漁労、狩猟など、自給的な生活をしてきたが、現在では鉄鉱山や水力の開発、森林資源の工業利用や農業の浸透で、トナカイ遊牧などの伝統的生活様式は変化を強いられている。近代国家の国境に隔てられてはいるが、サーミ人の一体感は強く、各国政府は民族文化保護と地域開発の両立を迫られている。
[塚田秀雄]