ラミア(読み)らみあ(英語表記)Lamia

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラミア」の意味・わかりやすい解説

ラミア
Lamía

ギリシア,バルカン半島部南部の都市。アテネ北西約 150km,エーゲ海のマリアコス湾沿岸の平野に位置する。前5世紀マリス地方の中心地として建設された。前4世紀後半マケドニアの勢力下に入り,前 323~322年にはこの地でマケドニア軍が第2アテネ同盟軍により包囲された (ラミア戦争) 。前 192年アイトリア連盟がセレウコス朝アンティオコス3世を市に招き入れたため,ローマの報復を受け破壊された。中世にはフランク人のアテネ公国の要塞となり,その後カタロニア人,トルコ人の支配を経て,1832年ギリシア領。現在,商工業中心地で,石鹸,綿織物たばこなどの工業が立地,コムギ,オリーブ,柑橘類などの取引が行われる。アテネとセサロニキを結ぶ幹線鉄道から分岐する支線が,市を通って東約 15kmにある外港スティリス (スティリダ) まで延びる。人口4万 3898 (1991推計) 。

ラミア
Lamia

ギリシア神話子供をさらって食うとされる女怪。もと人間美女であったが,ゼウス愛人となり,生れた子を次々にヘラに殺されたことを恨んで,自分より幸福な母親に嫉妬し,その子を取って食う妖怪になったという。ヘラは,それでもなお彼女に対する迫害をやめず,眠りを奪ったが,その代りにゼウスがラミアの目を自由に取りはずしできるようにしてやった。それゆえ彼女は,目をはずし容器に入れて眠ることがあり,その間は子供たちは安全であるといわれる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラミア」の意味・わかりやすい解説

ラミア
らみあ
Lamia

ギリシアの神話・民間信仰に現れる女怪。エジプト王ベロスの娘、あるいはポセイドンの娘ともいう。ゼウスに愛されたが、子を産むたびにヘラに狂わされて子殺しを犯し、ついに悲痛のあまり醜怪な容貌(ようぼう)となって、他の女から子を奪っては飲み込むようになったという。また、漂流中のオデュッセウスの部下を食った海の怪物スキラを、ラミアの娘とする説もある。本来は、人間の血を吸い内臓を食う鬼のようなものであったが、のちに乳母(うば)たちが幼児を脅したり寝かせたりするときに使うお化けの名となった。よく似たものに、モルモ、ゲッロ、カルコなどもあるが、これらが固有名詞で、ラミアは総称ともされる。ギリシアでは、迷信が盛んになったローマ期から中世を経て近代になっても、この名は子供を脅すのに使われた。

[中務哲郎]

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