サンスクリットなど古代インドの言語で〈王〉を意味する語。《リグ・ベーダ》の時代にはラージャンrājanの語形が用いられ,部族の首長を意味していた。後期ベーダ時代に入ると王権が伸張し,つづく仏教成立時代には専制君主政の発達をみる。当時のいわゆる十六大国のほとんどは王国であり,国王は自らをラージャと称した。一方,部族制度を維持したリッチャビ族の国家では,支配階層に属する者がみなラージャと称したという。インドで最初に帝国を建設したマウリヤ朝の王の称号もラージャである。つづく時代に北西インドに侵入したギリシア系・中央アジア系の民族の諸王は,マハーラージャmahārāja(〈大王〉の意),ラージャーディラージャrājādhirāja(〈王中の統王〉の意)などの称号を用い,グプタ朝の王はマハーラージャーディラージャmahārājādhirāja(〈大王中の統王〉の意)という称号を用いている。これらの称号が,その後のインドの王によって用いられた。イギリス支配時代の藩王たちもマハーラージャと称している。
執筆者:山崎 元一
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サンスクリットで「王」を意味する。『リグ・ヴェーダ』の時代にはアーリヤ人の部族長,氏族長を意味したが,前8世紀頃からマウリヤ朝までの王権の強大化に伴い,この語の内容も変わった。しかし西暦紀元前後に異民族が「王の王」,さらに4世紀から「大王の王」の称号を用いるようになると,たんなるラージャの称号は用いられなくなった。
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