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ソ連邦のピアノ奏者。20世紀後半を代表する大家で,レパートリーは広いが,とりわけベートーベンの厳粛と豪快,ラフマニノフの壮麗と豪華は,類がない。1937年モスクワ音楽院に入学,第2次世界大戦をはさんで,47年まで在学。在学中,42年にプロコフィエフの《ピアノ・ソナタ第6番》の初演者に選ばれてモスクワでデビュー,45年に全ソビエト音楽コンクールのピアノ部門で1位入賞。49年には早くもスターリン賞を受け,東欧諸国で演奏活動を開始,さらに60年アメリカでデビューし,西側諸国に新鮮な衝撃を与えた。リヒテルの演奏技術は卓越したものであるが,いわゆる技巧家ではなく,豊かで深い表現力と異常な緊張感を伴っているのが特色である。70年初来日。
執筆者:岩井 宏之
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ウクライナのピアノ奏者。ジトーミル生まれ。20世紀後半を代表する大家の一人だが、ほとんど独学でピアノ奏法を身につけた。1937年モスクワ音楽院に入学、名教師ゲンリヒ・ネイガウスに師事。在学中の40年モスクワでデビューし、プロコフィエフのピアノ・ソナタ第6番を初演。45年全ソ音楽コンクールで第1位となり名をあげた。50年から東欧諸国に楽旅、60年初めて西側に出てアメリカ・デビュー。これが決定的な成功を収めてリヒテルの存在は一躍世界中に知れ渡った。70年(昭和45)初来日。卓越した技巧を有したリヒテルの表現力は非常に幅が広く、迫力満点の激しい緊張を生み出す一方、柔和で叙情的な楽趣の表出にも長(た)けていた。レパートリーは広く、とくにバッハ、ベートーベン、シューベルト、シューマン、ラフマニノフ、スクリヤービン、プロコフィエフを得意とした。
[岩井宏之]
『昆田亨写真『巨匠リヒテルの世界』(1987・東京新聞出版局)』
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