日本大百科全書(ニッポニカ) 「オイストラフ」の意味・わかりやすい解説
オイストラフ
おいすとらふ
Давид Фёдорович Ойстрах/David Fyodorovich Oystrah
(1908―1974)
ロシアのバイオリン奏者。20世紀を代表する名手の一人。ユダヤ系ロシア人の子としてウクライナのオデッサ(現、オデーサ)に生まれる。1937年イザイ国際コンクールで優勝、国際的に知られたが、まもなく始まった第二次世界大戦のため、西欧諸国での活発な活動は戦後の1950年代まで持ち越された。1955年(昭和30)初来日。L・アウアーの系統を引くバイオリン奏者であったが、技巧重視、情緒偏重のアウアーのスタイルを克服し、安定した技巧のうえに、作品の内容を直截(ちょくせつ)に表出する格調の高いスタイルを築き上げ、後進に大きな影響を及ぼした。バロックからロシアの現代音楽まで、レパートリーの広いことでも有名。晩年は指揮でも活躍した。息子のイーゴリИгорь/Igor'(1931―2021)もバイオリン奏者として知られている。
[岩井宏之]