日本大百科全書(ニッポニカ) 「リーフェンシュタール」の意味・わかりやすい解説
リーフェンシュタール
りーふぇんしゅたーる
Leni Riefenstahl
(1902―2003)
ドイツの映画監督、俳優、写真家。ベルリンに生まれ、絵画と舞踏を学ぶ。舞踏家として名声を確立するが、1926年『聖山』で映画女優としてデビュー。一連の山岳映画に主演後、『青の光』(1932)を監督・主演する。ヒトラー政権時代に、ナチ党大会記録映画『意志の勝利』(1935)、ベルリン・オリンピックの記録映画『オリンピア』二部作(『民族の祭典』『美の祭典』(1938))を監督、傑出した撮影技術とリズミカルな編集により、世界の注目を浴びる。第二次世界大戦後ナチ宣伝の容疑で投獄されるが無罪となる。戦後は『低地』(1954)のみを完成、映画製作は停滞するが、その後第一級の写真家として活躍。アフリカの先住民を撮った写真集『ヌバ』(1973)、『カウ・ヌバ』(1976)ほか、アフリカ関係の著書も出す。晩年から潜水撮影を始め、水中写真集『水中の驚異』(1990)などを出版。このほか、自叙伝『回想』(1987)がある。また、2002年発表の『ワンダー・アンダー・ウォーター 原色の海』はダイビングによる映像を収めた48年ぶりの新作映画である。1993年には、ドイツとベルギーの合作で彼女の足跡をたどったドキュメンタリー映画『レニ』(レイ・ミュラー監督Ray Müller(1948― ))が製作された。1980年(昭和55)に来日している。
[奥村 賢 2022年6月22日]
資料 監督作品一覧
青の光 Das blaue Licht:Eine Berglegende aus den Dolomiten(1932)
信念の勝利 Der Sieg des Glaubens(1933)
意志の勝利 Triumph des Willens(1935)
自由の日 Tag der Freiheit - Unsere Wehrmacht(1935)
民族の祭典 Olympia 1. Teil - Fest der Völker(1938)
美の祭典 Olympia 2. Teil - Fest der Schönheit(1938)
低地 Tiefland(1954)
ワンダー・アンダー・ウォーター 原色の海 Impressionen unter Wasser(2002)
『平井正著『レニ・リーフェンシュタール――20世紀映像論のために』(1999・晶文社)』▽『瀬川裕司著『美の魔力――レーニ・リーフェンシュタールの真実』(2001・パンドラ)』▽『ライナー・ローター著、瀬川裕司訳『レーニ・リーフェンシュタール――美の誘惑者』(2002・青土社)』▽『スティーヴン・バック著、野中邦子訳『レニ・リーフェンシュタールの嘘と真実』(2009・清流出版)』▽『椛島則子訳『回想――20世紀最大のメモワール』上下2巻(文春文庫)』