ルシャ(読み)るしゃ(英語表記)Edward Ruscha

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルシャ」の意味・わかりやすい解説

ルシャ
るしゃ
Edward Ruscha
(1937― )

アメリカの画家コンセプチュアル・アーティスト。ネブラスカ州オマハに生まれ、オクラホマ・シティで育つ。1956年、画家になるためロサンゼルスに移住し、1960年まで同地のチュイナード美術学院で美術を学ぶ。講師だったアーティスト、ロバート・アーウィンRobert Irwin(1928―2023)から日常的な物や大衆文化の表現を通して独自の世界観を表現することを学ぶ。

 1960年代に、道端の建物や標識を取り込み、ことばと組み合わせた絵画で有名になった。また、1960年代末から流れ出すような曲線で文字を描いたリキッド・ペインティングや、紙に「罪」「オペラ」といったことばを火薬で描いたドローイングも行った。作品はポップ・アートの要素を取り込みながら、日常の文脈から切り離された文字の連想を喚起する力と、そのイメージが絵画空間に働く力を強調しているという点で、コンセプチュアル・アート側面ももっていた。

 1962~1968年、ルシャの興味は写真に向かった。『26のガソリンスタンド』(1962)は、ロサンゼルスからオクラホマへ帰る途中のガソリンスタンドを記録した写真集であるが、そこでは日常の事物のミニマリズム的反復が行われているだけでなく、カトリック教徒としての生い立ちを反映し、ガソリンスタンドを精神的な巡礼の旅の札所に見立てていた。南カリフォルニアの建築物を撮影したシリーズ「ロサンゼルスのアパート」(1965)、「サンセット通りのすべての建物」(1966)、「ロサンゼルスの34の駐車場」(1967)をそれぞれ写真集として出版。日常的な事物の反復のなかで、ロサンゼルスという土地の特殊性を暗示した。

 1969~1977年、布にジュースで描くような実験的作品の後、絵画に回帰する。1980年代には、差し込む光を背景に「99パーセント悪魔、1パーセント天使」といったことばが描かれた絵画や、アクリル絵具エアブラシで吹きつけた色の層で光を表す絵画を描いた。それらの試みは1998年、ロサンゼルスのポール・ゲティ美術館からの依頼により光の反射を描いた13フィート(約4メートル)の巨大な絵画『ことばのない絵』に結実した。

 1990年代には、広告看板の写真のように、誇張された山の上にロサンゼルスの通りの名前を描いた連作の絵画作品を制作。そのなかの『ホープオリーブスプリング』(1999)のように、脈絡もなく組み合わされたイメージと文字による強い象徴性で観客の連想をかきたてた。

 ポップ・アート、コンセプチュアル・アート、プロセス・アート(完成した作品の形よりもそれがどのようにしてその形をとるに至ったかという過程を重視する芸術様式)との接点をもちながらどのグループにも属さない独創的な制作姿勢は高く評価された。1982年~1983年サンフランシスコ近代美術館を皮切りにアメリカ国内の5か所を巡回した回顧展、1989年ポンピドー・センターなどを巡回した個展、1999年ウォーカー・アート・センター(ミネアポリス)での個展、2001年ハーショーン美術館(ワシントンDC)などを巡回した回顧展を開催。1997年ホイットニー・バイエニアル(ニューヨーク)、ベネチア・ビエンナーレに出品。

[松井みどり]

『Siri Engberg, Clive Phillpot et al.Edward Ruscha, Editions, 1959-1999; Catalog Raisonne (1999, Walker Art Center, Minneapolis)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

日本歴史地名大系 「ルシャ」の解説

ルシャ
るしや

アイヌ語に由来する地名。コタン名のほか河川名としても記録されている。当地一帯は近代に入り植別うえんべつ村に包含された。仮名表記は「ルシヤ」(「蝦夷巡覧筆記」「東海参譚」「東蝦夷地場所大概書」「東行漫筆」、「蝦夷日誌」一編、「戊午日誌」志礼登古誌など)のほか「ルウシヤ」(蝦夷志)もある。「地名考并里程記」は語義について「ルシヤ 夷語ルーシヤニの略語なり。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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