ルリハコベ(その他表記)Anagallis arvensis L.

改訂新版 世界大百科事典 「ルリハコベ」の意味・わかりやすい解説

ルリハコベ
Anagallis arvensis L.

日本では暖帯以南の海岸近くに生えるサクラソウ科の一年生の雑草。ハコベに似てるり色の花をつけるので,この和名がある。植物体は無毛。茎は四稜があり,分枝して,地表をはうか斜上する。葉は対生し,卵形または狭披針形で全縁,長さ1~2cm,鋭頭,基部は無柄で円形。3~5月ころ,葉腋(ようえき)に1花をつける。花柄は細長く,1.5~4cm。萼は5裂する。花冠は5深裂し,るり色で花喉部が赤く,直径約1cm。蒴果(さくか)は球形で径約4mm,横に割れるが,これはルリハコベ属の特徴でもある。花の黄赤色のものをアカバナルリハコベ,俗にベニハコベと呼ぶ。全世界の温帯から熱帯に広く分布し,伊豆七島,本州(紀伊半島),四国,九州,琉球にみられる。ヨーロッパではかつて重要な薬用植物だった。この種を含めてこの属の若干の種が岩石園などに植えられている。ルリハコベ属Anagallis英名pimpernelという。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルリハコベ」の意味・わかりやすい解説

ルリハコベ
るりはこべ / 瑠璃繁縷
[学] Anagallis arvensis L.

サクラソウ科(APG分類:サクラソウ科)の一年草。茎は四角形で細く、多数分枝してはい、広がる。葉は無柄で対生し、長さ1~2センチメートルで先はとがる。茎葉ともに毛はなく、緑白色である。春、各葉腋(ようえき)に花柄を出し、約1センチメートルの花を上向きに開く。花冠は5裂して先端は丸く、初め青紫色で、のちに赤く変わる。花期後、花柄は下向きになり、小果ができる。海岸に沿った日当りのよい道端に生え、西日本から熱帯地方に分布する。名は、花色を瑠璃(るり)に例え、草姿がハコベに似ていることによる。花が初めから赤色の品種をアカバナルリハコベといい、小笠原(おがさわら)では、これが普通である。

[鳥居恒夫 2021年3月22日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ルリハコベ」の意味・わかりやすい解説

ルリハコベ
Anagallis arvensis; pimpernel

サクラソウ科の一年草。全世界の熱帯から暖温帯に広い分布をもつ典型的な広分布植物で,日本では東海地方より西の暖地の畑や路傍にみられる。全体の形がハコベに似た小さい草で,茎は細長く地上をはい,30cmぐらいで4稜がある。葉もハコベに似て対生,ときに3輪生し,長さ1~2cmの楕円形で3脈がある。春,細長い枝を出して,その頂にるり色の1個の小花を上向きに咲かせる。花後は下向きになる。5弁花で可憐なため,ときに花壇に植えることもある。小笠原諸島や外国には花色の赤い品種もあり,アカバナルリハコベと呼んで区別することもある。

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