ローヌ川(読み)ろーぬがわ(英語表記)le Rhône

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ローヌ川」の意味・わかりやすい解説

ローヌ川
ろーぬがわ
le Rhône

スイス南部とフランス南東部を流れて地中海に注ぐ川。全長812キロメートル。スイス領内290キロメートル中、72キロメートルはレマン(ジュネーブ)湖を通過する。流域面積9万7000平方キロメートルの90%近くがフランス領。ラテン語名ロダヌス川Rhodanus。アルプス山中、フルカ峠に近いローヌ氷河に発し、スイスのバレー(ワリス)州内を南西流、北西流してレマン湖に入る。同湖南西端のジュネーブから流出してフランス領に入り、ジュラ山脈サボア・アルプスの間を大きく曲流しながらほぼ南西流してリヨンに至る。ここからは、ほぼまっすぐに南流してカマルグ地方の三角州に至り、大小二つのローヌ川に分流してリオン湾に流れ込む。ソーヌ川イゼール川、ドローム川、デュランス川、ガール川など支流が多く、支流や運河を通じてセーヌ川やライン川とも結ばれ、フランス南東部の河川交通の大回廊を形成している。

 1933年ローヌ公社(CNR(セーエヌエル)=Compagnie Nationale du Rhône)が設立され、上流のジェニシアから下流アルルに至るまで計21のダムを築造し、発電、灌漑(かんがい)に利用するとともに、運河開削、浚渫(しゅんせつ)、河港整備などの総合開発事業を進めてきた。1960年代に開発が進み、この事業により、それまで急流であったローヌ川は姿を変え、流域の工業化に重要な役割を果たした。流路にはリヨン、ビエンヌ、バランス、モンテリマル、アビニョン、アルルなどの都市があり、それぞれ工業化が著しい。河谷平野はブドウ果樹、野菜、小麦の栽培地である。

高橋 正]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ローヌ川」の意味・わかりやすい解説

ローヌ川
ローヌがわ
Rhône

スイス南部およびフランス南東部を流れる川。全長 812km。スイス,バレー州のローヌ氷河に源を発し,ブリーク付近で流量を増し,アルプペニンとベルナーオーバーラントの間をほぼ西流し,マルティニで北西に流路を変えてレマン湖 (ジュネーブ湖) に流入。レマン湖を流出してフランス領に入り,ジュラ山脈に横谷を形成しながら迂回してリヨンにいたる。ここでソーヌ川と合流,マシフサントラル (中央山地) の東縁に沿って南流,途中イゼール川,ドローム川を合せ,アビニョンの下流でデュランス川を合せ,大三角州を形成しながら地中海のリヨン湾に注ぐ。上流域はフランス最大の電源地帯。リヨンから下流の谷は,ソーヌ,モーゼル,ライン各川の谷とともに,地中海地方と北海および大西洋地方を結ぶ連絡路として,歴史的にも重要な役割を果した。急流が多いため水運は従来不振であったが,危険部分の迂回用など運河の建設も進んでおり,さらにダムの建設,水運用閘門の改善なども大規模に行われて,通航の便が増大している。ベルフォール近郊からストラスブールを結ぶローヌ=ライン運河がある。

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