改訂新版 世界大百科事典 「レーメル」の意味・わかりやすい解説
レーメル
Ole Christensen Römer
生没年:1644-1710
デンマークの天文学者。商人の息子として生まれ,コペンハーゲン大学で学ぶ。J.ピカールがT.ブラーエのベーン島の天文台の調査に訪れた際(1671),E.バルトリンとレーメルがこれに同行,レーメルはピカールとともにパリに赴き,パリの天文台で観測に従事。木星の衛星の食の周期が木星-地球間の距離に依存するというG.D.カッシニの発見に関して,カッシニは光の速度を有限とすることで説明できると考えたが,のちこの着想を捨てた。レーメルはこの着想を引き継いで,1676年に光速度の有限性とその大きさを発表した。G.ガリレイが光の速度の有限性を立証しようとして以来,最初の本格的な立論だったといってよい。1729年,ブラッドリーが星の光行差を発見して以来,このレーメルの立場は急速に普及することになる。
1679年イギリスに渡ってI.ニュートン,E.ハリー,J.フラムスティードなどと会見,81年コペンハーゲン大学の数学教授となる。また王立天文官,コペンハーゲン天文台長に任じられる。
レーメルの業績として伝えられるものの中に,温度計の発明がある。水の沸点と雪の融点を2定点に採用した(その点ではA. セルシウスの温度計に近い)レーメルの温度計は,G.D.ファーレンハイトがレーメルと直接会って(1708),彼の手に受け継がれて完成された。
執筆者:村上 陽一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報