ロスケリヌス(読み)ろすけりぬす(その他表記)Roscelinus

精選版 日本国語大辞典 「ロスケリヌス」の意味・読み・例文・類語

ロスケリヌス

  1. ( Roscelinus ) 中世ヨーロッパのコンピエーニュ哲学者個物のみが実在し、普遍名目であるという唯名論をはじめて主張。(一〇五〇頃‐一一二〇頃

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロスケリヌス」の意味・わかりやすい解説

ロスケリヌス
ろすけりぬす
Roscelinus
(1045ころ―1120ころ)

フランス中世の哲学者、神学者。コンピエーニュの生まれ。生地およびランスに学び、同地とブザンソンなどで教えた。彼は弁証学(論理学)に優れており、唯名論の先駆者と目される。これは当時の伝統的実在論に反対し、普遍は「音声の流れ」flatus vocisないし名称にすぎず、個物のみが実在であるとするものであり、弟子アベラールなどに影響を与えた。さらに彼は論理学(唯名論)を神学三位一体論(さんみいったいろん))に適用し、「もし、神において三位が一つの実在であって、三つの実在でなければ、子とともに父と聖霊も受肉したことになる」といい、三神論に陥ったとして1092年のソアソン宗教会議の審問を受け、またアンセルムスに批判された。

[清水哲郎 2017年12月12日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロスケリヌス」の意味・わかりやすい解説

ロスケリヌス[コンピエーニュ]
Roscelinus Compendiensis

[生]1050. コンピエーニュ
[没]1125頃
フランスのスコラ哲学者。故郷とランスで学び,故郷,ロッシュ,ブザンソン,ツールで教えた。極端な唯名論者とされ,P.アベラールの師の一人。アンセルムスの伝えるところでは,彼は普遍者は言語表現にすぎず,存在するのは個体だけであると主張。この考えが三位一体論 (それに関するアベラールあて書簡だけが彼の著作中現存) に適用されると,神の三位格はそれぞれ独立したものという三神論になるとして,1092年のソアソン教会会議で排斥された。

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百科事典マイペディア 「ロスケリヌス」の意味・わかりやすい解説

ロスケリヌス

フランスのスコラ学者。アベラールの師で,普遍論争における唯名論最初の提唱者とされる。唯名論を神学にも適用し,三位一体の教義を三神論的に解したが,ソアソン宗教会議(1092年)で非難され撤回。著作はアベラール宛書簡のみ伝存

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世界大百科事典(旧版)内のロスケリヌスの言及

【普遍論争】より

…11世紀末のカンプレの司教オドOdoは原罪遺伝説を擁護し,アダムは多数の個の実体的統一であるから,アダムの子らはみな同一実体で,性質のみが異なると主張した。他方,オドと同時代でアベラールの師でもあったロスケリヌスRoscellinusは,実在するものは個物のみで,普遍はたんなる〈音声vox〉にすぎないと考えて,三位一体ではなく三神論を主張するに至った。アベラールはこの極端な唯名論をやや緩和して,普遍とは有意味な語たる〈ことばsermo〉ないし〈名辞nomen〉がさし示す意味であり,〈個物の一般的な漠然たる印象〉がこれに対応すると考えた。…

※「ロスケリヌス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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