フランス中世の哲学者、神学者。コンピエーニュの生まれ。生地およびランスに学び、同地とブザンソンなどで教えた。彼は弁証学(論理学)に優れており、唯名論の先駆者と目される。これは当時の伝統的実在論に反対し、普遍は「音声の流れ」flatus vocisないし名称にすぎず、個物のみが実在であるとするものであり、弟子アベラールなどに影響を与えた。さらに彼は論理学(唯名論)を神学(三位一体論(さんみいったいろん))に適用し、「もし、神において三位が一つの実在であって、三つの実在でなければ、子とともに父と聖霊も受肉したことになる」といい、三神論に陥ったとして1092年のソアソン宗教会議の審問を受け、またアンセルムスに批判された。
[清水哲郎 2017年12月12日]
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…11世紀末のカンプレの司教オドOdoは原罪遺伝説を擁護し,アダムは多数の個の実体的統一であるから,アダムの子らはみな同一実体で,性質のみが異なると主張した。他方,オドと同時代でアベラールの師でもあったロスケリヌスRoscellinusは,実在するものは個物のみで,普遍はたんなる〈音声vox〉にすぎないと考えて,三位一体ではなく三神論を主張するに至った。アベラールはこの極端な唯名論をやや緩和して,普遍とは有意味な語たる〈ことばsermo〉ないし〈名辞nomen〉がさし示す意味であり,〈個物の一般的な漠然たる印象〉がこれに対応すると考えた。…
※「ロスケリヌス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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