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唯名論 ゆいめいろん nominalism

翻訳|nominalism

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

唯名論
ゆいめいろん
nominalism

普遍者は名辞にすぎないとし,その実在を否定する哲学上の立場。実在するのは個体だけであり,たとえば赤という普遍概念は多くの赤いもののもつ赤という共通の性質に対して与えられる言葉,もしくは記号で,赤いものを離れて赤が実在するのではないとする。

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デジタル大辞泉の解説

ゆいめい‐ろん【唯名論】

実念論に反対して、実在するのは個物であり、普遍は個物のあとに人間がつくった名辞にすぎないと考える立場。ロスケリヌスオッカムがその代表者。名目論。ノミナリズム。→普遍論争

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百科事典マイペディアの解説

唯名論【ゆいめいろん】

英語nominalismなどの訳。〈名目論〉〈ノミナリズム〉ともいい,実念論(実在論)に対する。普遍の実在をめぐる論争(普遍論争)において,個物のみが実在し,普遍は名nomenにすぎないとする立場で,ロスケリヌスアベラールオッカムらが代表者。

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世界大百科事典 第2版の解説

ゆいめいろん【唯名論 nominalism】

名目論ともいい,中世の実念論に対立する立場。個物のみ実在し,類・種などの普遍は実在せず,ただ人間の精神の中で〈個物の後にpost rem〉生じると説く。普遍は等しい個物に対する単なる〈声vox〉ないし〈名nomen〉であるか,個物に面して精神が懐胎し総括する〈概念conceptus〉または概念の概念として精神により〈総括された記号terminus conceptus〉とされる。ロスケリヌス,アベラールオッカムが代表者。

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大辞林 第三版の解説

ゆいめいろん【唯名論】

〘哲〙 中世スコラ哲学の普遍論争における考え方の一。概念的思惟の対象たる普遍を個物に先立つ実在とみる実念論に対して、個物こそが実在であり普遍とは単に物のあとにある名称にすぎないとする。近世哲学の先駆となる。代表者はオッカムなど。ノミナリズム。名目論。

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

唯名論
ゆいめいろん
nominalism英語
Nominalismusドイツ語
nominalismeフランス語

普遍の存在に関する哲学上の説の一つであり、名目論、ノミナリズムという語があてられることもある。この語の由来であるラテン語のnominales(「名称、名称的な人たち」、つまり「名称、名称」と言いたてる人たち)はアベラールの一派につけられた呼称である。唯名論という呼称は、多くの個物(たとえば、複数の人間)に対して一つの名称(たとえば「人間」)が対応しているときに、この多くのものに対して共通であるという性格(この性格を帯びる存在者が普遍)はものの側にではなく、ただ名称nomenの側にのみあるとする主張に由来する。したがって、この立場は、このような性格の存在者をなんらかのものresの側に認める普遍実在論(英、realism)と対立し、ものとして存在するのは個物のみだと主張する。
 唯名論の先駆者と目される11世紀のロスケリヌスは普遍を「音声の流れ」としたといわれるように、まずは、音声voxとして発せられる名称が多くの個物に共通のものであるという立場が成立したと思われる。
 このような音声に普遍を帰する立場から出発したアベラールは、ものと音声としての名称という素朴な唯名論の枠組みを脱して、音声が聞く者に理解を生じさせるという表示significatioの場面を深く考察し、単なる音声ではなく、理解ないし概念を表示する機能を帯びた音声であることばsermoないし名称nomenが普遍であるとした。
 その後、14世紀前半のオッカムは概念が普遍であるとしたが、その概念はことばであって、ものの自然的な記号にほかならない。アベラールやオッカムは概念論に近い主張とみられることもあるが、両者とも結局、ものではなくことばの側に普遍を帰する立場であり、より洗練された唯名論の主張を代表する。やがて、この立場はホッブズを経てイギリス経験論の哲学に引き継がれ、今日でもことに英米系の分析的な哲学において有力な傾向となっている。
 唯名論はことばの側にのみ普遍を認めるとはいえ、ではなぜある範囲の個物がひとまとめにされて一つの名でよばれるのかという点については、極端な唯名論の立場をとらない限り、人間のまったく恣意(しい)的な営みによる(規約による)とまでは主張せず、ものの側に分類のなんらかの原因を認めざるをえない。普遍実在論にならずにその点を説明しきれるかどうかに、唯名論の成否はかかっている。[清水哲郎]

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世界大百科事典内の唯名論の言及

【オッカム】より

…伝えられるところでは,皇帝と初めて対面したオッカムは〈皇帝陛下,陛下が剣で私を守って下さるなら,私はペンで陛下をお守りします〉とのべたとされるが,以後20年間のオッカムの論争活動はこの言葉に集約されている。オッカムは第一かつ根本的に神学者であり,彼の思想のいわゆる経験論,唯名論および主意主義などの側面は,神の絶対的な超越性を確立し,神以外のすべての実在の根元的な偶然性を示そうとする試みに対応するものである。他方,彼が信仰と理性の分極化に拍車をかけ,この二者の統合の上に築かれていたスコラ学の崩壊を早めたことは否定できない。…

【概念】より

…実念論のうちには普遍概念が経験的個物を超越して存在するイデアであると考えるプラトン的方向と,それを自然の中や間に実在する生物学的な種や類とみなすアリストテレス的傾向が類別される。これに対して,抽象概念とは人間の心の対象としてのみ存在する概念にすぎないとみる概念論の立場や,さらに,実在するのは個物だけで抽象的普遍とは単なる名前であると考える唯名論があり,三つの見地が鼎立(ていりつ)する。一般に,中世正統派や理性論的傾向の哲学は実念論的であり,イギリス古典経験論を一例とする経験主義の哲学では概念論,とくに唯名論的性格が顕著である。…

【ビュリダン】より

…生涯を通して学芸学部で活躍し,アリストテレスのほとんどすべての著作について〈注解〉や〈問題集〉を著したが,神学にはほとんど関心を示すことはなかった。オッカムの提唱した唯名論の立場を批判的に継承・発展させ,主として自然哲学の分野で優れた研究を行うとともに,ニコル・オレーム,ザクセンのアルベルトのような逸材を育成して,パリ学派と呼ばれる学統の創始者となった。彼の科学的達成としてまず第1に挙げられるのは,アリストテレスの投射運動論をまっこうから批判して,動者から動体に直接こめられるインペトゥスimpetus(勢い)という力学的概念を新たに導入したことである。…

【普遍論争】より

…普遍universalia(類と種)は自然的実在であるか,それとも知性の構成物にすぎないかをめぐって行われた中世哲学最大の論争。前者の主張を実念論(欧語は実在論と同一だが近代の観念論に対するそれと区別して概念実在論,略して実念論と称することが多い),後者の主張を唯名論と呼んでいる。この問題はプラトンとアリストテレスのイデア理解の相違にさかのぼるが,古代哲学においては一般に認識は対象を離れてはなく,論理学が形而上学から独立することがなかった。…

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