日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロッツェ」の意味・わかりやすい解説
ロッツェ
ろっつぇ
Rudolph Hermann Lotze
(1817―1881)
ドイツの哲学者。5月21日ザクセンのバウツェンに生まれる。1834年よりライプツィヒ大学で生理学、物理学、哲学を学び、医学、哲学の学位を取得。1844年からゲッティンゲン大学の哲学教授、1881年にベルリン大学に移るが、同年7月1日死去。
ドイツ観念論の系譜を引くロッツェの哲学は、いわゆる目的論的観念論で、思弁哲学と自然科学の調和を図ろうとしたところに特色がある。彼は、カントにおける「感性界」(物の世界)と「叡知(えいち)界」(物自体の世界)という二元的世界を、ライプニッツの影響において神的な合目的的世界へと一元化する。自然科学が究明する「感性界」(因果連関の世界)とは、ロッツェによれば、究極的な「価値」であるとともに神的な最高理念である「善」を目的とする世界(目的連関の世界)の機械論的な現れなのである。また彼は、「命題」の「妥当」を独自の「現実」と捉(とら)えることにおいて固有の「真理」の領野(意味連関の領野)を考えた。こうした思想は、新カント派の西南ドイツ学派に直接の影響を及ぼしたほか、G・フレーゲにも思索の基盤を与えた。主著に『形而上(けいじじょう)学』Metaphysik(1841)、『論理学』Logik(1843)、『小宇宙』Mikrokosmos(1856~1864)などがある。
[高山 守 2015年4月17日]