ルドルフ(読み)るどるふ(英語表記)Paul Marvin Rudolph

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルドルフ」の意味・わかりやすい解説

ルドルフ
るどるふ
Paul Marvin Rudolph
(1918―1997)

アメリカの建築家。ケンタッキー州エルクトン生まれ。アラバマ工科大学卒業。1947年にハーバード大学GSD(大学院大学デザイン・コース)修了。在学中はワルター・グロピウスに学ぶ。フロリダでトゥイッチェル・アンド・ルドルフ建築設計事務所を設立(1947~51)。その後ポール・ルドルフ建築設計事務所を設立し、ボストン、ニュー・ヘブンニューヨークと所在地を移す。ヒーリー・ゲストハウス(通称コクーンハウス。1949)、ウォーカー・ゲストハウス(1953)など一連の小住宅をシンプルな平面計画と独創的で合理的な構造計画でデザインし、第二次世界大戦後の新世代のアメリカ建築家として注目を集める。

 その後、ウェルズレイ・カレッジ・アートセンター(1955、マサチューセッツ州)、エール大学森林学研究所(1957、コネティカット州)によりアメリカ東部の気候風土に対応した建築のあり方を示し、インターナショナリズムからリージョナリズム(地域主義)へのスタイルの転換を示した。コーネル大学、ハーバード大学、プリンストン大学をはじめ、さまざまな大学の講師を経て、エール大学建築学科主任となる(1958~65)。その期間、エール大学のキャンパスの一連の建築、すなわちパーキングガレージ、既婚学生寮(ともに1962)、建築学部(1963)などを打ち放しコンクリートによるコア中空の柱、スキップフロア(床の高さをずらすこと)やコンクリートのはつり壁(打設後のコンクリート表面を削り取り自然石の表面のようにする仕上げ)で新しい表現を行いながら、流動的でダイナミックな空間を実現した。

 さらにクロフォード・メイナー高齢者集合住宅(1962、コネティカット州)、IBM研究所、オフィス、工場施設(1962、ニューヨーク州)、ボストン・ガバメント・サービスセンター(1963)などをつくり、その後マサチューセッツ工科大学(1966)、ウェイン州立大学モンティース・カレッジ・センター(1966、デトロイト)をはじめとする大学キャンパス計画を手がけ、さらに都市的な規模のデザイン、例えばワシントンDC(1966)やローワー・マンハッタン(1967)などの再開発計画を進める。しかし、スケールは異なっても、ユニット化した構造と空間の単位をダイナミックに展開させる手法は共通していた。

 グロピウス、ミース・ファン・デル・ローエらの弟子にあたる世代であるルドルフは1950~60年代のアメリカ建築界においてコンクリートの表現、都市計画の手法を開発し確立しただけでなく、そのスタイルをもって世界中の建築家に影響を与えた。

[鈴木 明]

『二川幸夫写真、槇文彦ほか文『現代建築家シリーズ ポール・ルドルフ』(1968・美術出版社)』『『GA No.20 ポール・ルドルフ』(1973・エーディーエー・エディタ・トーキョー)』『二川幸夫企画・編集『ポール・ルドルフの建築透視図』(1974・エーディーエー・エディタ・トーキョー)』『「ポール・ルドルフ作品集 1946―74年 作品100題」(『a+u』1977年7月臨時増刊・エー・アンド・ユー)』


ルドルフ(1世)
るどるふ

ルードルフ(1世)


ルドルフ(2世)
るどるふ

ルードルフ(2世)

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