ロバートソン(読み)ろばーとそん(英語表記)Frederick William Robertson

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロバートソン」の意味・わかりやすい解説

ロバートソン(Dennis Holme Robertson)
ろばーとそん
Dennis Holme Robertson
(1890―1963)

イギリスの経済学者。ケンブリッジ大学で学び、同大学講師(1930~38)、ロンドン大学教授(1939~44)を経て、1944年A・C・ピグーの後を受けて、ケンブリッジ大学第3代経済学教授(~1957。彼まではケンブリッジ大学の経済学教授は一時には1人のみ)。また、48~50年王立経済学会会長をはじめとして、重要な役職を歴任。ロバートソンの研究分野は多方面にわたるが、とくに景気変動論、貨幣論面で著名で、処女作『産業的変動の研究』A Study of Industrial Fluctuation(1915)はイギリスのアカデミックな研究者によって著されたこの分野の最初の研究書として歴史的な意義をもっている。同書が実物的分析を中心にしていたのに対して、26年の『銀行政策と価格水準』Banking Policy and Price Level(邦訳2種あり)では貨幣面の強調貯蓄と投資の関係からの景気変動の説明、期間分析手法の導入、期待の重要視、などの点で、『貨幣論』(1930)のJ・M・ケインズにも大きな影響を与えたが、『一般理論』ではケインズに同調せず、A・マーシャルの伝統を色濃く伝えた最晩年の講義録『経済原論講義』Lectures on Economic Principles全3巻(1957~59)を残した。ほかにも著書・論文多数。名文家としても著名。

[早坂 忠]

『豊崎稔訳『貨幣政策と物価』(1936・大同書院)』『高田博訳『銀行政策と価格水準』(1958・巌松堂)』『森川太郎・高木昇訳『経済原論講義』全3巻(1960~62・東洋経済新報社)』


ロバートソン(Frederick William Robertson)
ろばーとそん
Frederick William Robertson
(1816―1853)

イングランド教会(イギリス国教会)の聖職者説教者として知られる。初め陸軍軍人になるための教育を受けたが、のちに聖職を志してオックスフォード大学で学ぶ。南部海辺の小都市ブライトンの聖三一教会の牧師となったが、国教会の形式尊重を嫌い、実生活に結び付いた力強い説教で聴衆を魅了した。社会問題に関心が深く、モーリスとも親交を結び、労働者の支持を得たが、保守的な人々からは敬遠された。直截(ちょくせつ)明解なその説教は、心理的描写に秀(すぐ)れ、没後4巻の書物にまとめられて刊行された。

[八代 崇 2018年1月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロバートソン」の意味・わかりやすい解説

ロバートソン
Robertson, Oscar

[生]1938.11.24. テネシー,シャーロット
アメリカ合衆国のバスケットボール選手。本名 Oscar Palmer Robertson。大学とプロを通じて活躍したバスケットボール史上に残るトップ選手の一人。インディアナ州インディアナポリスで少年時代を送り,クリスパス・アタックス高校のバスケットボールチームを2回にわたり州大会優勝に導いた。 1956年スポーツ奨学金を得てシンシナティ大学に入学,同大学バスケットボールチーム初のアフリカ系アメリカ人選手となった。 1960年のローマ・オリンピック競技大会ではアメリカ代表チームの一員として金メダルを獲得した。 1960年NBAのシンシナティ・ロイヤルズに入団し,そのシーズンの最優秀新人賞を受賞。 1961-62年シーズンには1試合平均 30.8得点,12.5リバウンド,11.4アシストの年間トリプルダブル (3部門の数字がすべてふた桁) の偉業を達成した。 1970年ミルウォーキー・バックスに移籍し,チームを同シーズン優勝に導いた。 1974年の現役引退までにリーグのアシスト王に6度輝いた。通算成績は2万 6710得点 (1試合平均 25.7) ,7804リバウンド (同 7.5) ,9887アシスト。 1979年にネイスミス記念バスケットボール殿堂入りを果たした。

ロバートソン
Robertson, Sir Dennis Holme

[生]1890.10.23. ノーフォーク,ローウェストフト
[没]1963.4.21. ケンブリッジ
イギリスの経済学者。 A.C.ピグー,J.M.ケインズと並ぶケンブリッジ学派の巨匠。ケンブリッジ大学に学び,1930年同大学講師,39~44年ロンドン大学教授,44年ケンブリッジ大学正教授 (1957名誉教授) ,王立経済学会会長などを歴任。 25歳で英語圏における正統派のアカデミックな経済学者による最初の景気循環論の研究書『産業変動の研究』A Study of Industrial Fluctuation (15) を著わし,その地位を確立。貨幣理論,景気変動理論,完全雇用からの乖離の問題について,ケンブリッジ学派特有の冷徹な目と,熱烈な政策意識で多大の成果をあげた。またその経過分析と呼ばれる手法が『貨幣論』を執筆していた頃のケインズに与えた影響は大きく,両者はその後理論的立場は離れていくが,終生ケインズの議論の相手であり続けた。著書は上記のほか,『貨幣論』 Money (22) ,『銀行政策と価格水準』 Banking Policy and the Price Level (26) ,『経済原論講義』 Lectures on Economic Principles (3巻,57~58) など。

ロバートソン
Robertson, William

[生]1721.9.19. ミッドロージアン
[没]1793.6.11. エディンバラ
スコットランドの歴史家,長老教会派の聖職者。『スコットランド史 1542~1603』 History of Scotland during the Reigns of Queen Mary and of King James VI till his Accession to the Crown of England (2巻,1759) を公にして称賛を博し,エディンバラ大学学長 (62~92) ,スコットランド歴史編修官 (63) に任じられた。著書として『皇帝チャールズ5世時代史』 The History of the Reign of the Emperor Charles V (69) ,スペイン領アメリカの歴史を描き,文化人類学の発展に大きな影響を与えた名著『アメリカの歴史』 History of America (2巻,77) などがある。

ロバートソン
Robertson, Sir Howard Morley

[生]1888.8.16. ソルトレークシティー
[没]1963
アメリカ生れのイギリスの建築家,建築理論家。 1905年にヨーロッパに渡り,パリのエコール・デ・ボザールで学んだのち,09年に J.イーストンと共同でロンドンに建築事務所を開いた。また建築理論家として知られ,多くの著書を残した。 52~54年 RIBA (イギリス王立建築家協会) 会長。主作品はウェストミンスターの造園協会展示館 (1928) ,ブリュッセル万国博覧会のイギリス館 (35) ,主著『建築構造の原理』 Principles of Architectural Composition (24) ,『現代の建築デザイン』 Modern Architectural Design (32) 。

ロバートソン
Robertson, Thomas William

[生]1829.1.9. ノッティンガムシャー,ニューアーク
[没]1871.2.3. ロンドン
イギリスの劇作家。俳優となり,のち劇作に転じ,『社会』 Society (1865) ,『階級』 Caste (67) など,リアリスティックな社会劇によって名声を確立,イギリス近代劇の祖と仰がれる。

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