産業循環(読み)さんぎょうじゅんかん

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

産業循環
さんぎょうじゅんかん
industrial cycle英語
industrieller Zyklusドイツ語

資本主義的生産は労働力と生産手段の集団化により社会的性格を与えられ、社会的生産力を急速に発展させる物質的条件をもった。歴史的には、産業革命を経て勝利を収めた機械制大工業が著しく生産力を発展させたが、その生産力の発展は、直線的、安定的なものではなく、資本の運動として周期的に激しい収縮と膨張を交互にもち、絶えず再生産の攪乱(かくらん)を伴いながら全体として生産力を増大させるという独特の循環的発展を遂げてゆく。この産業の生活経路は中位の活況、繁忙、恐慌、不況の各時期を周期的に継起させる。これを産業循環という。この4局面のうち、再生産の攪乱として資本主義的本質を暴露するもっとも重要な局面が恐慌である。
 産業循環の4局面は次のように展開する。中位の活況は、不況下に生き残った少数の強力な個別資本が特別剰余価値を求める固定資本の更新により開始し、順次活発化し、生産部門間の連係で一般化する。同時に低利の貸付資本の潤沢さは、指導的商品の生産部門の本格的生産拡大を引き起こし、景気上昇はさらに拡大し、次の繁忙の局面がやってくる。
 資本は目先の利潤に眩惑(げんわく)される。固定資本の集中的更新と拡大新投資がおこり、この一大新投資をもたらす商品の需要が供給より超過する事態とさえなる。労働力はどんどん吸引され、価格は上昇し、利潤は増大し、熱狂的資本投下競争を引き起こす。信用は膨張し、再生産過程は極限にまで伸長する。
 だが、この繁忙は長続きしない。固定資本更新投資が一巡し、拡大新投資の建設期間が終わるや、事態は一方的供給要因に変わり、商品の一方的販売が累積的に増大する(過剰生産要因醸成)。同時に多くの資本家は、蓄積していた貨幣資本をすでに投じているので、これに対応できない。信用によりこれを緩和する貸付貨幣資本の需要が高まり、利子率は急騰するが、醸成しつつある先の過剰生産は、この信用に隠蔽(いんぺい)されながら大規模化し、ついにはその時々の価格変動では調整しきれない総生産と総需要の累積的矛盾が爆発する。供給の過多が一斉に露呈し、市場が逼迫(ひっぱく)すれば、銀行は危険を感じて信用を収縮する。それは再生産過程に強力な破壊作用を及ぼす。生産拡大と狭い限界の支払い能力ある需要(消費)との矛盾が一挙に現実化し、恐慌となる。
 恐慌では、価格崩壊、利潤率低下、資本過多がおこる。資本が生き残るために貸付貨幣資本への需要がさらに強まり、その間、利子率は高騰を続ける。結局、過多な弱小資本は破産し、生き残った強大な資本も生産を縮小し、多数の失業者が出現する。この資本の過多と人口の過剰とが同時に現れるが、両者を結合すればますます過剰生産となる。過剰な資本の破壊と資本価値の減価がおき、それを通じて利潤率のいっそうの低下が抑えられ、恐慌は不況にとってかわる。生産は低迷し、相対的過剰人口(=失業者)は豊富であり、低賃金、低利子率となる。これらは、生き残った少数の強大な資本をして、減価した資本を集中・集積させ、技術を改善して生産を拡大させる。不況を克服するための生産力増大の努力がなされる。ふたたび欠陥だらけの循環が始まる。
 このように資本主義的再生産過程は、具体的には産業循環として進行する。[海道勝稔]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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