ワイエス(読み)わいえす(英語表記)Andrew Wyeth

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワイエス」の意味・わかりやすい解説

ワイエス
わいえす
Andrew Wyeth
(1917―2009)

アメリカの画家。精密なリアリズムによる人物画、風景画で広範な人気を博している。著名なイラスト画家ニューエル・C・ワイエスNewell Convers Wyeth(1882―1945)を父として、ペンシルベニア州のチャッズ・フォードに生まれ、幼いころから父の教えを受ける。初め水彩を描いたが、1948年のテンペラ画『クリスチーナの世界』で一躍注目され、同年ニューヨーク近代美術館に収蔵される。チャッズ・フォードのカーナー一家、メーン州クッシングのオルソン姉弟をモチーフとして描き続けた連作は、ラディカル・リアリズムの一典型として高く評価されている。一貫してテンペラ、ドライ・ブラッシュによる徹底した写実を追求しているが、アメリカの片田舎(いなか)を舞台に繰り広げられる人間の生と死のドラマがワイエスのテーマである。76年にはメトロポリタン美術館で、現存のアメリカ人画家として初めて回顧展が開かれた。86年、70~85年にかけて1人の女性をモデルに制作された『ヘルガ・シリーズ』が発表されて話題をよんだ。次男ジェームズ・ワイエスJames Wyeth(1946― )も画家で、作風は父アンドリューに近い。なお、生地チャッズ・フォードには、ワイエス美術館ともいうべきブランディワイン・リバー美術館がある。2007年、アメリカ政府より芸術栄誉賞を授与された。

桑原住雄・小西信之]

『桑原住雄監修『ワイエス画集 カーナー農場 1944―1975』(1981)』『難波英雄訳『ワイエス画集Ⅱ クリスチーナの世界』(1983)』『桑原住雄監訳『ワイエス画集Ⅲ ヘルガ』(1988・いずれもリブロポート)』『『現代美術 第3巻 ワイエス』(1993・講談社)』『『週刊美術館39 ホッパー/アンドリュー・ワイエス』(2000・小学館)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワイエス」の意味・わかりやすい解説

ワイエス
Wyeth, Andrew

[生]1917.7.12. ペンシルバニア,チャズフォード
[没]2009.1.16. ペンシルバニア,チャズフォード
アメリカ合衆国の画家。フルネーム Andrew Newell Wyeth。挿絵画家として有名なニュエル・コンバース・ワイエスの子。早くから父の指導を受け,1936年フィラデルフィアで最初の個展を開いた。翌 1937年にはニューヨークで個展を開き,すべての作品が完売。テンペラによる詳細をきわめた細密画風で,主として自宅のあるペンシルバニア州と別荘のあるメーン州の風景を描き,抒情的,象徴的空間のなかでの孤独な詩心を表現した。1971~85年に描いた隣人ヘルガ・テストーフの連作は数百点に上る。代表作『クリスティーナの世界』(1948,ニューヨーク近代美術館)。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android