ワケギ(その他表記)Allium fistulosum L.var.caespitosum Makino

改訂新版 世界大百科事典 「ワケギ」の意味・わかりやすい解説

ワケギ (分葱)
Allium fistulosum L.var.caespitosum Makino

ユリ科多年草。古名を〈フユキ〉ともいい,また地方によっては〈ヒトモジ(一文字)〉ともいう。ネギ変種とされ,関西で多く栽培される。原産地は諸説があり,バビロフアビシニアをあげている(1935)。ギリシアでは紀元前から栽培されており,東洋でも2000年前から栽培されていたといわれている。日本へは中国から1500年以上前に渡来したといわれている。形状はネギに似るが小型で分げつが多い。葉は細長く濃緑色で軟らかい。まれに抽だいはするが花器は退化し,結実はしない。生育するにつれて茎葉基部に小型の球根鱗茎)を形成する。6月には地上部が枯れ,球根は休眠にはいる。この球根を掘りあげて貯蔵し,8~9月に植え付ける。早生,中生,晩生種があり,早生種はよく分げつする。ぬた,薬味,汁の実に使うほか,なべ物によく使われ,とくにフグなべには欠かせない。東南アジアでの利用も多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワケギ」の意味・わかりやすい解説

ワケギ
わけぎ / 分葱
[学] Allium fistulosum L. var. caespitosum Makino

ユリ科(APG分類:ヒガンバナ科)の多年草。ネギの変種とされる。シベリア地方原産で、日本には5世紀ころには渡来して栽培されていたらしい。江戸時代にはすでに冬の野菜として名が知られ、冬葱(ふゆねぎ)ともよばれていた。ネギより小形で、高さ30センチメートルほど、細く、何本も群がって株をなす。地下の鱗茎(りんけい)は長卵形で、表面の古い鱗葉は黄赤褐色となっている。葉は夏に枯れて鱗茎は休眠する。掘り上げて陰干ししておき、秋口に鱗茎を1個ずつ離して畑に植え付ける。ただちに発芽して冬の間に新しい葉が伸び、鱗茎は数個ときに30個ほどにも殖える。3~4月になって成長したものも食べられるが、普通は土寄せして軟白させ、香気と柔らかさを保つくふうをする。ネギと違って花茎を出すことはまれである。

[星川清親 2019年3月20日]

 未成熟の鱗茎(りんけい)と葉茎が、早春の季節感豊かな香味野菜として食用にされる。葉を刻んで吸い物の具や薬味として用いるほか、なまのままもろみをつけて前菜に、またゆでて酢みそ和(あ)え、ぬたなどにもよい。

[齋藤 浩 2019年3月20日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワケギ」の意味・わかりやすい解説

ワケギ(分葱)
ワケギ
Allium fistulosum var. caespitosum

ヒガンバナ科ネギ属の多年草。小型のネギ(葱)の一種で食用に栽培される。地下部はラッキョウのように卵形にふくれて 3~5個に分かれ,全体がタマネギ(玉葱)の皮のような鱗皮に包まれる。地上部は細長く円筒状で,高さ 30cmくらい,ネギよりもニラ(韮)に近い感じであるが,扁平ではなく,全体にネギに似た香りがある。ワケギは結実せず,株分けで増やす。

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百科事典マイペディア 「ワケギ」の意味・わかりやすい解説

ワケギ

シベリア〜小アジア原産といわれるユリ科二年草または多年草。ネギの一変種という説もあったが,近年,分げつ性のネギと分球性のタマネギとの種間雑種から生まれた野菜であることがわかった。茎葉はネギよりも柔軟で,地下部は赤褐色に肥大し鱗茎をなす。花茎が出ず,また分げつしやすいのが特徴。3〜5月のネギの端境期に多く収穫される。ネギとほぼ同様に利用。
→関連項目ネギ

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栄養・生化学辞典 「ワケギ」の解説

ワケギ

 [Allium fistulosum(caespitosum group)].

 ユリ目ユリ科ネギ属の多年草.ネギの一変種.薬味などに用いる.

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