日本大百科全書(ニッポニカ) 「バビロフ」の意味・わかりやすい解説
バビロフ
ばびろふ
Николай Иванович Вавилов/Nikolay Ivanovich Vavilov
(1887―1943)
ソ連の植物遺伝・育種学者。モスクワ生まれ。1906年モスクワ農業大学に入学。初期の研究は植物の免疫性、耐病性、耐病性品種の育成にあった。のちに、世界各地の野生および栽培植物の収集、研究をもとに、種や属が異なっていても互いに似た遺伝的変異がおこるとする「遺伝的変異の相同系列の法則」(1920)、また、植物を大きな分類群から順次小さな群に、さらに遺伝的変異の構成別に細分し、その結果から植物の変異型の分布地図を作成する「植物地理的微分法」を確立した。さらに多様な変異が集中している地方を種や変種の起源中心地とし、中心地には顕性形質をもつ起源植物が、そこからの遠隔地には潜性形質をもつ変異系統植物が多いとする『栽培植物の起源中心地』(1926)を発表、栽培植物の発祥地を七大中心地に分けた(1940)。バビロフ記念全ソ連植物栽培研究所(サンクト・ペテルブルグ)で栽培植物の収集、維持が図られてきた。
[柳下 登]
『N・I・ヴァヴィロフ著、中村英司訳『栽培植物発祥地の研究』(1980・八坂書房)』