鳥獣をおびき寄せたり、通路に仕掛けて捕らえる装置。アメリカ先住民(ネイティブ・アメリカン)のわなを調べたメイスンO.T.Masonは3種類に分けている。
第一は囲みわなというもので、おりや落し穴を利用して、獲物をほとんど無傷のまま入手する方法である。アフリカでは、ゾウ、カバ、アンテロープなどをこのわなに追い込むことが知られ、しばしば獲物が好むものをおとりとして仕掛けの中に置いておく。
第二は捕縛わなで、多少の傷はやむをえないが、殺すことなく獲物を手に入れるやり方であり、種類も多い。網猟もその一つで、古くは紀元前7世紀のアッシリアで猛獣・大形獣狩りに使われてきた。漁労用の刺網(さしあみ)も同じ原理を水中に応用したものといえよう。くくりわなも単純だがよく知られたものである。縄紐(ひも)を輪状にして、動物の通り道などに仕掛け、これに獲物の足がかかると、自然に締まるようにしてある。これを発達させた形態がはね柱わなである。弾性に富んだ自然の樹木を綱で引っ張って曲げ、綱の先端に輪をつくって踏み板の上に置く。踏み板に触れれば、綱を留めたくさびが外れ、獲物は綱で足を締め付けられたまま宙架かりになる。アイヌのツル猟、エスキモーのモルモット猟などに使われた。
第三は殺戮(さつりく)わなとよばれ、文字どおり、殺して獲物を入手する。アフリカのピグミーはゾウ狩りの際、大石の落ちてくるわなをよく使う。このタイプはシベリアのギリヤーク、オロチ、ネネツ諸民族の間でも知られ、北アメリカ北西海岸のヌトカの人々は、シカ猟の際、重い丸太の落下で獲物をしとめるわなを用いる。このほか、獣の通り道に張った綱に触れると、矢が発射され、獲物をしとめるという飛び道具と複合した装置も、アイヌの熊狩りで使われていた。また森林狩猟民ほどわなの重要性が高くないアフリカのカラハリ砂漠のサン人も、獣の水飲み場に毒を流し、物陰で獲物が弱るのを待って捕らえる狩猟を行っている。
[関 雄二]
…古くから諸民族の間に広く用いられてきた猟法で,その方法はきわめて多種多様で変化に富んでいる。弓矢,槍,吹矢,鉄砲などによる積極的な猟法に対して,わなは獲物の通り道に設置し,獲物がこれに気づかずに通過する際に捕らえようとする設備である。落し穴,くくりわな,箱わな,圧殺わな,とらばさみなどに分類することができるが,獲物の大きさや習性,立地条件などに応じて,それぞれ多様な変化形がみられ,これらを組み合わせたものがくふうされる。…
※「わな」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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