化学辞典 第2版 「ワルデン反転」の解説
ワルデン反転
ワルデンハンテン
Walden inversion
不斉中心の(炭素)原子に対する置換反応で起こる立体配置の反転.P. Walden(ワルデン)はリンゴ酸からクロロコハク酸をつくるとき,塩化チオニルを用いた場合と五塩化リンを用いた場合で,旋光性が互いに反対のものが得られることを発見した.つまり,同一の光学活性体から出発しながら試薬の相違によって光学異性体ができるのであるから,いずれか一方の場合には,置換するとき立体配置の反転が起こっていなければならない.その後,反応機構の研究からSN2型反応において,一般的にワルデン反転を伴うことが明らかになった.求核試薬が不斉炭素原子を攻撃する際,脱離基が離れていくと同時に協奏的に背後から攻撃する場合に反転が起こる.不斉中心は炭素原子でなくてもよい.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報