日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワーグマン」の意味・わかりやすい解説
ワーグマン
わーぐまん
Charles Wirgman
(1832―1891)
イギリスの画家。ロンドンに生まれる。パリで絵の修業をし、帰国後、陸軍に入る。陸軍大尉で退役し、『イラストレイテッド・ロンドン・ニューズ』の特派美術通信員として中国に渡る。1861年(文久1)来日し、以後、日本で美術通信員の仕事を続ける。水戸浪士の東禅寺襲撃事件、生麦(なまむぎ)事件、薩英(さつえい)戦争、鉄道開業式、西南戦争など幕末維新の大事件を画で西欧に報道した。62年からは時局風刺雑誌『ジャパン・パンチ』を横浜で刊行し、居留外国人の情報・娯楽誌として好評を受ける。この雑誌は日本人にも影響を与え、日本の新聞に漫画が登場し、「ポンチ」ということばを流行させ、87年(明治20)まで25年間続く長寿雑誌となった。63年には小沢カネと結婚し1子をもうけている。油彩画、水彩画も描いたことから高橋由一(ゆいち)、五姓田芳柳(ごせだほうりゅう)らが弟子入りし、日本近代洋画成立期の指導的立場にあった。横浜で没。
[清水 勲]
『酒井忠康著『海の鎖――描かれた維新』(1977・小沢書店)』▽『清水勲編『ワーグマン日本素描集』(岩波文庫)』