んす(読み)ンス

デジタル大辞泉 「んす」の意味・読み・例文・類語

んす[助動]

[助動][んせ・んしょ|んし|んす|んす・んする|んすれ(んすりゃ)|んせ(んし)]《尊敬助動詞「しゃんす」の音変化》助動詞しゃんす」に同じ。
「必ずそれまで短気な心持たんすな」〈浄・卯月の紅葉

んす[助動]

[助動][んせ・んしょ|んし|んす|んす|んすれ(んすりゃ)|んせ(んし)]《丁寧の助動詞「ます」の音変化》助動詞「ます」に同じ。
一盃いっぺえつぎんした」〈洒・甲駅新話
[補説]近世遊里中心に用いられた。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「んす」の意味・読み・例文・類語

んす

  1. 〘 助動詞 〙
  2. [ 1 ] ( 助動詞「しゃんす」の変化した語。活用は「んせ(んしょ)・んし・んす・んす(んする)・んすれ・んせ(んし)」。→補注( 1 )( イ )。四段・ナ変動詞の未然形に付く。→補注( 1 )( ロ ) ) 尊敬の意を表わす。さんす。上方を中心に男女ともに用いた。→補注( 1 )( ハ )
    1. [初出の実例]「又来さんしたか。早う往なんしなど言へば」(出典:仮名草子・浮世物語(1665頃)一)
    2. 「大夫様のたしかに請け取らんす事じゃ」(出典:浮世草子・好色万金丹(1694)一)
    3. 「川様、嬉しう思はんしょ」(出典:浄瑠璃・冥途の飛脚(1711頃)中)
  3. [ 2 ] ( 助動詞「ます」の変化した語。活用は「んせ(んしょ)・んし・んす・んす・んすれ・んせ」。→補注( 2 )( イ )。動詞・助動詞の連用形に付く。→補注( 2 )( ロ ) ) 丁寧の意を表わす。ます。いす。江戸時代、主として、遊里の女性によって用いられた。→ありんす。→補注( 2 )( ハ )
    1. [初出の実例]「局へごんせ、しっぽりと知る人になりんしょ」(出典:浄瑠璃・傾城酒呑童子(1718)三)
    2. 「そんなら書きんすによ」(出典:咄本・鹿の子餠(1772)十字)
    3. 「わっちがそばに居んすりゃア、さまざまな事を言なんして」(出典:洒落本・穴可至子(1802))

んすの補助注記

( 1 )( [ 一 ]について ) ( イ )仮定形「んすれ」は、助詞「ば」の付いた「んすれば」の変化した「んすりゃあ」の形でみられる。( ロ )四段・ナ変以外の動詞には「さしゃんす」の変化した「さんす」が用いられ、この「んす」と対応する。( ハ )もと遊里で用いられた語であるが元祿一六八八‐一七〇四)頃には一般の女性も用い、さらに、男性にも用いられるようになった。
( 2 )( [ 二 ]について ) ( イ )江戸で使われた例で、未然形に「んし」の形をとったものが少数例みられる。「モウききんしない」〔洒落本・郭中奇譚‐弄花巵言〕、「はらたてアしんしん」〔洒落本・郭中奇譚‐弄花巵言〕。また、仮定形「んすれ」は助詞「ば」の付いた「んすれば」の変化した「んすりゃあ」の形でみられる。( ロ )江戸で使われた例で、上にくる動詞の連用形がイ段音の一音節であるときは、その動詞との間に「い」を加えることがある。「昼まってゐいんすにへ」〔洒落本・遊子方言‐しののめのころ〕、「おまへの所へ来(きゐ)んしてから」〔洒落本・遊子方言‐しののめのころ〕。( ハ )はじめ上方の遊里で用いられたが、江戸中期頃から江戸の遊里、主として吉原で盛んに用いられた。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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