アカネズミ(読み)あかねずみ(英語表記)large Japanese field mouse

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アカネズミ」の意味・わかりやすい解説

アカネズミ
あかねずみ / 赤鼠
large Japanese field mouse
[学] Apodemus speciosus

哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目ネズミ科の動物。本州四国九州、佐渡島、対馬(つしま)、隠岐(おき)、壱岐(いき)、屋久島(やくしま)、種子島(たねがしま)、淡路島、伊豆諸島、五島列島などに分布し、北海道には別亜種エゾアカネズミA. s. ainuがいる。耕地周辺、草原、森林など広い範囲にすむ。亜高山帯や高山帯には少ないが、それらの場所でも森林が伐採されると進出する。種実や昆虫を食べる。体重は50~60グラム。離島では一般に大形化し、とくに隠岐島前(どうぜん)では80グラムにもなる。富山市と浜松市を結ぶ線を境に、東北本州のアカネズミは染色体数が48、西南本州、四国、九州のそれは46で、大臼歯(だいきゅうし)の大きさにもこれとほぼ一致した違いがみられ、前者では小形である。低地や南部の分布地では盛夏を除く通年高地や北部では春から夏に繁殖し、1産2~8子。北海道には大陸系のカラフトアカネズミA. peninsulae giliacusも生息している。伊豆の七島熱ツツガムシ病の一型)には、病原体を保有するツツガムシ宿主として関係している。

[宮尾嶽雄]


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改訂新版 世界大百科事典 「アカネズミ」の意味・わかりやすい解説

アカネズミ
Apodemus speciosus

齧歯(げつし)目ネズミ科の哺乳類赤褐色毛色をし,目と耳の大きな,体長10cm前後のもっともふつうの野ネズミの1種。腹面は白色で,胸から首にかけて橙色の部分がある。尾は体よりもやや短く,8~10cm。子はくすんだねずみ色。九州から北海道までの日本各地の明るい林や畑にすみ,人家に入ることもある。大きな後脚でジャンプしながら,夜間地表を活発に動き回り,木には登らず,地表に落ちた穀類,どんぐりなどの植物の種子をおもに採食する。また,それらを集めて,木の根もとや石の下などに貯蔵する。植物の葉や茎は好まず,したがって,ふつうハタネズミなどのように植林地に被害を及ぼすことはない。巣は地下にトンネルを掘って,その奥を巣室とし,枯葉などを集めてつくる。暖かな地方では春と秋,寒冷な地方では夏に繁殖し,1産3~6子を生む。子は生後20日間ほどで自立できる。日本の固有種とされるが,よく似た近縁種は広くユーラシアに分布する。
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百科事典マイペディア 「アカネズミ」の意味・わかりやすい解説

アカネズミ

齧歯(げっし)目ネズミ科の哺乳(ほにゅう)類。体長10cm,尾8〜10cm,体毛は赤褐色で,腹部と手足は白色。日本特産種。穀類,野菜,どんぐりなどを食べる。高山にもすむが,低地や低山の疎林に多い。1腹3〜6子。日本では最も優勢な野ネズミだが,農作物・森林の害は著しくない。
→関連項目ネズミ(鼠)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アカネズミ」の意味・わかりやすい解説

アカネズミ
Apodemus speciosus; Japanese field mouse

齧歯目ネズミ科。体長 12~15cm。体は細く,尾が長く,耳や眼は大きい。体色は,夏は黄褐色から赤褐色に,冬は暗褐色になる。低地から低山にかけての広葉樹林,混交林に多い。地下トンネルに枯れ草などで巣をつくる。種子などデンプン質に富む植物質のものや昆虫類を食べる。北海道,本州,四国,九州に分布するが,奄美大島以南にはいない。

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