ギリシア北部にあるギリシア正教の聖地。カルキディキ半島の先端の三つの半島のうち、いちばん東側の半島をさす。長さ45キロメートル余。古代には、半島は初めアクテAktēとよばれ、半島先端の標高2033メートルの最高峰をアトス山と称したが、のちに半島全体をアトス山とよぶようになった。紀元前492年に半島先端を迂回(うかい)しようとしたペルシア艦隊が嵐(あらし)のために壊滅したことに懲りて、ペルシア王クセルクセスは前483~前481年に、幅約2キロメートルの半島基部に運河を掘った。たぶん紀元後7世紀以前から、キリスト教の修道士たちが孤独の隠修生活を求めて人跡まれなこの半島に住み着いた。963年に石造の大ラブラ修道院を創建したアタナシオスAthanasios(920ころ―1000ころ)により、東方教会的な修道院生活の一中心となる基礎が据えられた。1046年には、公式に「聖山」Ayion Orosの名称を与えられ、15世紀に繁栄の頂点に達し、15~19世紀のオスマン・トルコ帝国支配の時代にも一定の独立性を認められた。今日のアトス山は20の修道院と付属する多数の僧庵(そうあん)からなり、1926年に発効した特許状に基づいて、ギリシア共和国に属しつつも自治権を有し、また女人禁制で、男子の入山も特別の許可を要する。なお、この聖地は1988年に世界遺産の複合遺産(文化、自然の両方の価値がある遺産)として登録されている(世界複合遺産)。
[清永昭次]
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