アブラギリ(読み)あぶらぎり

改訂新版 世界大百科事典 「アブラギリ」の意味・わかりやすい解説

アブラギリ (油桐)
Japanese tung-oil tree
Japanese wood-oil tree
Aleurites cordata(Thunb.) R.Br.ex Steud.

中国原産で古く渡来したと考えられるトウダイグサ科の落葉樹で,種子から油が得られるので各地で栽培され,本州,四国,九州の山野で野生化しているものもみられる。

 大きいものでは高さ10~15m,直径30~60cmになる落葉樹木で,樹皮は淡褐灰色,横に楕円形の皮目が多数ある。葉は互生し,葉柄5~20cm,葉身は直径12~20cmのほぼ円形か上部が2,3裂する。葉身の基部に2個の突起した腺がある。雌雄同株。雄花序と雌花序はともに円錐花序をなして枝端に別々に生じ,6月ごろ直径約4cmの淡紅色を帯びた白花を開く。果実は直径2~2.5cmの扁球形,鈍三稜のある蒴果(さくか)で,中に大型の3個の種子を含む。

 種子を搾って得られる油がキリ油で,α-エレオステアリン酸を主成分とするすぐれた乾性油である。かつては灯油,油紙,雨合羽,和傘などに用いられ,今日でもペイント,ワニス,印刷用インキ,リノリウム,焼付塗料等に利用される。しかし毒性があるので食用にはならない。木材は淡黄褐色,やや軽軟(比重約0.43)で,下駄,家具の部分材などに用いられ,木炭は漆器研磨の特殊用途がある。樹皮の浸出液タンニンを多く含み,皮なめし用,漁網染料とされた。別名油木毒荏(どくえ),イヌギリ,ヤマギリ。中国のシナアブラギリA.fordii Hemsl.およびカントンアブラギリA.montana Wils.や太平洋諸島のククイノキA.moluccana Willd.(英名candlenut tree)からもキリ油が得られ,中国,台湾を含め広く栽培される。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アブラギリ」の意味・わかりやすい解説

アブラギリ
あぶらぎり / 油桐
[学] Vernicia cordata (Thunb.) Airy Shaw
Aleurites cordata Steud.

トウダイグサ科(APG分類:トウダイグサ科)の落葉高木。別名ドクエ。高さ10メートルほどになる。葉は心臓状の卵円形で先は尖(とが)り、しばしば浅く3~5裂する。長さは15センチメートルほど、葉柄も同程度の長さで、枝先に集まってつく。花は白色の5弁花、花弁の基部は初め淡黄色、のちに紅変する。果実は球形で直径2.5センチメートルほど、縦に3本の筋(すじ)が入る。中は3室に分かれ、それぞれに1個の種子が入る。種子を絞ってとる油を桐油(きりゆ)とよぶ。これは空気中にさらされると固化する乾性油で、水に対する抵抗性が強く、油紙や提灯(ちょうちん)に使う油紙をつくり、また塗料の溶剤とする。材は軽く、下駄(げた)や家具の材料とする。中部地方以西の本州、四国、九州に生える。中国原産の栽培植物ともいわれる。またアブラギリは、シナアブラギリ(オオアブラギリ)V. fordii (Hemsl.) Airy Shaw(A. fordii Hemsl.)やカントンアブラギリV. montana Lour.(A. montana Wilson)などのアブラギリの仲間の総称としても用いる。シナアブラギリの果実は直径3~5センチメートル、5個前後の種子が入り、油の質もよい。

[星川清親 2020年6月23日]

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