翻訳|apse
アプシスapsisともいう。(1)ひとつの部屋から張り出して造る,半円またはこれに近い多角形平面の空間。天井には通常,半ドームをかける。古代ローマで盛んに造られた。ドームは宇宙の象徴と考えられたので,半ドームをかけたアプスは特別な場所として利用された。(2)キリスト教聖堂において,入口と反対側(通常東側)の身廊の端部に設けられる同様の張出し部分。長方形平面のこともある。初期キリスト教聖堂では半円の壁沿いに聖職者の座席(エクセドラ)を設け,その前方に大祭壇を安置した。9世紀ころアプスと身廊との間に方形または長方形の空間を加えてここを聖職者席とし,アプスに大祭壇を配置してここを聖所とした。聖職者席と聖所を一括して内陣(クワイアchoirまたはチャンセルchancel)といい,そのアプスは後陣,奥陣ともいう。アプスは側廊やトランセプトの端部にも造られ,ドイツでは9~12世紀にしばしば身廊の両端に設られけた。
執筆者:飯田 喜四郎
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…キリスト教会が皇帝礼拝の儀式を借用したのと同様に,この形式は皇帝や地方総督の宮殿の謁見用バシリカに負うところが大きいと考えられる。太陽をキリストの象徴としたところから,5世紀以降の教会堂はアプス(後陣)を身廊の東端に配置し,教会堂の方位を統一した。また施物や祭具を収納し,聖餐を準備する室をアプスに近い位置に造り,トリビューン(階上廊)やトランセプト(交差廊)を設けたが,これらの改良は主としてビザンティン帝国で行われた。…
…ニッチの床は一般に周囲の床や地表より高くするが,同じ高さとすることもある。ニッチは壁厚の範囲内に造られ,背面はアプスのように壁から外へ突出しない。【飯田 喜四郎】。…
…西洋古代から中世にかけて発達した建築の一形式で,その形式による建造物もバシリカと呼ぶ。長方形プランで長辺か短辺の中央に半円形のアプスがはり出す。古代地中海地方では,バシリカはおもに王宮の〈謁見の間〉,裁判所,取引市場などの公共建築に用いられた。…
※「アプス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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