デジタル大辞泉
「アラベスク」の意味・読み・例文・類語
アラベスク(〈フランス〉arabesque)
1 アラビア風の装飾模様。文字・蔓草・幾何学図形などを図案化したもの。唐草模様。
2 装飾的、幻想的な内容の楽曲。
3 クラシックバレエの基本体勢の一。右手を斜め上に、左手を斜め下に、右足で体重を支え、左足は斜め後方に上げる。
[補説]作品名別項。→アラベスク
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アラベスク
- 〘 名詞 〙 ( [フランス語] arabesque 「アラビア風」の意 )
- ① イスラム美術などに見られる葉、花、鳥獣、人物などを様式化して展開させた文様。イスラム世界で創案され、次第に世界各地へ伝わったもの。工芸品や建築に見られる。アラビア模様。〔外来語辞典(1914)〕
- ② ①の影響による幻想的、装飾的な器楽曲。
- ③ バレエの基本姿勢の一つ。片足で立ち、体を前に倒し、胸を張り、片手は前に、他の手足を後ろに伸ばす。
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アラベスク
arabesque
フランス語で〈アラビア風〉の意,とくに装飾文様について多用される。優美な渦巻曲線が直線や放射状の星形文様とリズミカルに錯綜し,シンメトリカルで軽快な無限展開を繰り広げるが,幾何学文様の範疇に入るほど抽象化されたものではない。7世紀前半にアラビアに起こったイスラムは,教義上,人物・鳥獣などのモティーフの採用を禁じた。そのため,美術上の表現にはオリエント古来の幾何学的組紐文や蔓草文に,樹葉,花冠,果実などを図式化したモティーフをからみ合わせた精緻な平面装飾が一貫して用いられた。この装飾は建物内外の壁面,床石,じゅうたん,器物,写本装飾,ししゅう,アラビア文字の末端の装飾など,イスラム文化の造形的特質となった。アラベスクはさらに西欧中世の写本装飾に影響を与える一方で,ペルシア,インドを通じて中国,日本にまで及び,牡丹唐草文など種々の花模様へと変容してゆく。一方,ルネサンス時代にローマで古代遺跡が発掘されるに及び,ヘレニズム期,古代ローマ時代のグロテスク文様もまた,アラベスクの概念に含められた。古代遺跡の多くは,たとえばネロのドムス・アウレア(黄金の家)の場合のように地下に埋もれて洞窟(グロッタ)の観を呈していたので,その壁面装飾の文様をグロテスクと呼んだのである。しかしこのグロテスク文様は,一般に流麗な葉状の曲線文様の中に花冠,鳥獣,人体をからませた綺想風の文様で,アラベスク文様と類似しているところから,イタリア語でアラベスコとも呼ばれた。この古典古代の幻想的で華麗な文様はルネサンス期の美術にはむろんのこと,その発展様式ともいうべきバロック,ロココ時代の絵画,彫刻,工芸,庭園のデザインへと展開した。特にラファエロによるバチカンのロッジアのグロテスク装飾は,のちにラファエリスク(ラファエロ風)とも呼ばれた。一般にさまざまのモティーフを交えた古典系統の蔓草文様をアラベスクと総称し,イスラムの文様を主とするアラビア風文様は時にモレスクmauresque(moresque)と別称される。また,この用語は装飾的・幻想的な器楽曲の標題や舞踊のポーズにも用いられている。
執筆者:友部 直
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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アラベスク
あらべすく
arabesque フランス語
原意は「アラビア風の」であるが、美術用語としては、イスラム美術に広範にみられる曲線的な装飾文様をいう。とくに、つる草のような優美な植物が絡み合った唐草模様をさすことが多いが、広義には、複雑に連続する幾何学図形、文様化されたアラビア文字をも含む。さらには、イスラム美術に限定せず、曲線の多い幻想的な装飾文様すべてをさしたり、人像や鳥獣を取り入れたグロテスク文様を含めることもある。
[篠塚二三男]
このことばは、他の芸術ジャンルにも取り入れられた。音楽では、一つの楽想を幻想的、装飾的に展開する作品の題名に用いられた。その初出は1839年出版のシューマンのピアノ小品『アラベスク・ハ長調』(作品18)である。ほかにドビュッシーのピアノ曲『二つのアラベスク』ホ長調・ト短調(1888)、ディーリアスのオーケストラ伴奏の合唱曲『アラベスク』(1911)などがある。バレエ用語としては、片足で立ち、片手を前に、他の手脚(てあし)を後ろに伸ばしたポーズをこの名でよぶ。
[関根敏子]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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アラベスク
arabesque
バレエ用語。アラビアの唐草模様を語源とするポーズの一つ。アダージョのゆるやかな動きや,アレグロの活気のある楽しい踊りの,一連の区切りとして使われることが多い。片脚で立ち,上げた脚をまっすぐ後方へ伸ばし,これに対向するように片腕を前方に伸ばし,手の先から上げた脚の爪先まで最も長い線を形づくる。支えの脚はプリエ (膝を曲げる) の場合もある。またポアント (爪先) ,ドミ・ポアントで立つ場合とア・テール (べた足) で立つ場合とがある。このポーズは,C.ブラシスがメルクリウスの彫像からヒントを得て考案したといわれ,身体の構え方,脚の上げ方でいろいろ呼び名があるが,そのバランスが最も重要。アティチュードとともにクラシック・バレエで男女の区別なく随所でみられる最も特徴的,かつ代表的なポーズである。チェケッティ派には5つ,ワガノワ派には4つ,フランス派には2つの基本的なアラベスクがある。
アラベスク
arabesque
連続模様の一種。もと小アジアでギリシア・ローマ時代に使われていた植物連続文様。イスラム美術の主要な装飾モチーフとして使われて様式化が進み,独特の装飾文様として完成,イスラムの代表的な文様となった。これがルネサンス以降西洋の建築,工芸の装飾に採用されたことから,「アラビア風の」という語義をもつこの名称がつけられた。アラベスク文様は左右上下に連続することが必須条件で,そのモチーフは植物,幾何学図文に限らず,動物,人物,架空動物なども自由に使われている。とりわけ西洋のアラベスクは,人物裸像,仮面,架空動物,植物,細密な植物連続文様のイメージが強い。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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アラベスク
arabesque
イスラーム文化から生まれた文様。植物の茎,葉を図案化して,唐草(からくさ)文様や幾何学文様に組み合わせ,さらにアラビア文字を植物に図案化して,菱,星,格子などを配した。モスクの壁面装飾,書物の飾りなどに用いられた。のちに動物も加えるようになり,ルネサンス以後ヨーロッパに広がる一方,アジアにも伝えられた。
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出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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アラベスク(美術)【アラベスク】
装飾文様の一種。フランス語で〈アラビア風〉の意。狭義にはイスラム美術にみられる,つる草に似た優美な曲線の交錯の中に,様式化した植物をモチーフとして採り入れた左右相称の文様。広義には植物,鳥獣,人物なども採り入れた空想的文様,唐草(からくさ)文,グロテスク文様なども含める。
→関連項目文様
アラベスク(舞踊)【アラベスク】
クラシック・ダンスにおけるポーズの名称。片足で立ち,片足を後方に上げ,その上げた片足がまっすぐに伸ばされた場合をいう。人体の形成する曲線を最大限に長くした,最も美しいポーズとされる。アダージョの重要なポーズの一つ。→バレエ
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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アラベスク
arabesque
植物の茎や葉を組み合わせて作った幾何学文様や唐草文様。「アラビア風」の意
偶像崇拝が禁じられたイスラーム世界では,彫刻や絵画が発達しなかったかわりに,装飾が多用された。アラベスクはモスク(イスラーム礼拝堂)の壁画や書物の装丁に用いられ,のちにはアラビア文字や鳥獣・人物なども図案化されて,ルネサンス以後はヨーロッパでも流行した。
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
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アラベスク〔漫画〕
山岸凉子による漫画作品。1970年代のソビエト連邦を舞台にした長編バレエ漫画。『りぼん』1971年10月号~1973年4月号、『花とゆめ』1974年6月号(創刊号)~1975年22号に連載。集英社りぼんマスコットコミックス全4巻、白泉社花とゆめコミックス全4巻。
アラベスク〔曲名〕
ドイツの作曲家ロベルト・シューマンのピアノ曲(1839)。原題《Arabesque》。題名は『アラブ風』を意味する。
出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報
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知恵蔵
「アラベスク」の解説
アラベスク
元来は「アラビア風(の唐草模様)」を指す。片足で立ち、もう一方の足を後方に真っすぐ伸ばすポーズ。手と上半身の位置によって数種類ある。バレエにおいて最も美しいとされる形。
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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世界大百科事典(旧版)内のアラベスクの言及
【バレエ】より
…ジョバンニ・ダ・ボローニャ作の《メルクリウス》像によりC.ブラシスが創始したと伝えられる。アラベスクarabesque片足で立ち片足を後ろに上げ,片手または両手を前に伸ばすポーズ。人体でつくりうる最も長い線を示す。…
【バレエ】より
…ジョバンニ・ダ・ボローニャ作の《メルクリウス》像によりC.ブラシスが創始したと伝えられる。アラベスクarabesque片足で立ち片足を後ろに上げ,片手または両手を前に伸ばすポーズ。人体でつくりうる最も長い線を示す。…
【アッバース朝】より
…この古代ギリシアの学術の導入により,イスラム思想界では合理主義的な[ムータジラ派]が盛んになり,一時は彼らの学説が公認教義となったほどである。美術面では,宗教的な理由から絵画や彫刻は発達せず,そのためにかえってアラベスクといわれる装飾模様が発達したが,この時代にはその祖型ともいうべきものができあがった。【森本 公誠】。…
※「アラベスク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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