日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルギナーゼ」の意味・わかりやすい解説
アルギナーゼ
あるぎなーぜ
arginase
アルギニンをオルニチンと尿素に加水分解する酵素。L-アルギニンにのみ作用し、逆反応は行わない。
尿素を排出する動物(哺乳類(ほにゅうるい)、爬虫類(はちゅうるい)のうちカメの仲間、両生類、軟骨魚類)の肝臓にはかならず存在する。これらの動物の肝臓では、毒性の強いアンモニアを尿素に変えるオルニチン回路という一連の酵素反応系があり、アルギナーゼはこの最終段階の反応を行っている。アンモニアをそのまま排出する硬骨魚類や無脊椎動物(むせきついどうぶつ)、あるいは尿酸を排出する鳥類やカメの仲間を除く爬虫類には存在しない場合が多い。なお、この酵素はアルギニン以外にカナバニン(ナタマメから抽出されたアミノ酸の一種)、オクトピン(海産無脊椎動物から発見された成分でアミノ酸の一種)なども分解する。ヒトでは先天的なアルギナーゼ欠損症による高アルギニン血症が知られており、血中のアルギニンやアンモニアの濃度が高くなり、幼児期に手足の麻痺(まひ)、発達遅延がおこる。
[菊池韶彦]