2,6,8-トリオキシプリンのこと。プリンヌクレオチドの代謝分解における最終産物である。1776年にスウェーデンの化学者シェーレが尿石中に発見したもので、動物の排出物中に多く含まれ、鳥類や爬虫類(はちゅうるい)ではとくに多い。ヒトの尿中には、1日に0.6~1グラム排出される。鳥類や爬虫類の排出物に水酸化ナトリウム溶液を加えると、結晶性の粉末として尿酸が沈殿する。無味無臭の白色結晶。エタノール、エーテルには不溶で、水にはわずかに溶ける。加熱しても融解せず、400℃以上で分解する。鳥類や爬虫類では窒素代謝の最終産物であるが、ヒトにおいてはほとんどが組織のプリンに由来するものである。
ヒトの血中尿酸量の正常値は、1デシリットル当り2.5~7.0ミリグラムである。病的増加がみられる例としては、激しい筋肉労働や白血病、やけどなどで核酸の崩壊がおこるとき、腎(じん)機能不全による排泄(はいせつ)障害のあるとき、痛風の発作時などが知られているが、脂質異常症、肥満症、糖尿病、高血圧症などの疾患でも高い場合が多いといわれている。痛風は、関節液中に尿酸ナトリウムの結晶が蓄積するもので、血中尿酸量が1デシリットル当り6~7ミリグラム以上となり、最高20ミリグラムを示す。また、遺伝性代謝疾患として1964年に発見されたレッシュ‐ナイハン症候群が知られている。これは男児にのみ発症し、脳性麻痺(まひ)、知能障害、自傷行為などを特徴とする。患者には血清尿酸値の高い状態が続く高尿酸血症、高尿酸尿が認められ、痛風様関節炎や尿路結石などがみられる。
[飯島道子]
『W・C・マクマリー著、斉藤正行・矢島義忠訳『人体の代謝』(1987・東京化学同人)』▽『森正敬著『未来の生物科学シリーズ24 生体の窒素の旅』(1991・共立出版)』▽『板垣英二編『チャート内科2 代謝・内分泌』(1993・医学評論社)』▽『井上八重子栄養指導・料理『働きざかり男性の高尿酸血症・痛風予防――食事のイメージを変えよう』(1996・女子栄養大学出版部)』▽『青木矩彦著『内分泌代謝学入門』(1998・金芳堂)』▽『河原和枝監修、佐々木環・市川和子執筆『栄養療法リーフレットシリーズ7 慢性腎不全(保存期)』(2003・日本医療企画)』▽『木原弘二著『痛風――ヒポクラテスの時代から現代まで』(中公新書)』
化学式C5H4N4O3で,2,6,8-トリヒドロキシプリンにあたる。ジウレイドの一種。無色の細かい結晶で,アルコールやエーテルに不溶。水にはごくわずかに溶ける。加熱しても融解せず,400℃以上では分解。スウェーデンの化学者で,クエン酸をレモンから,また乳酸を牛乳から単離したK.W.シェーレが尿石中に発見(1776)。鳥類や陸生爬虫類,また双翅目(そうしもく)以上の昆虫類では窒素代謝の主要終末産物として排出され,グアノ中にも多量に含まれる。哺乳類でも霊長類や軟体動物の腹足類ではかなり排出される。核酸に含まれるプリン塩基分解代謝の重要な中間体であり,キサンチンオキシダーゼによるキサンチン,ヒポキサンチンの酸化に伴って生成し,尿酸酸化酵素によってアラントインに酸化される。健康なヒトの尿中には1日約0.2~1.0g(平均0.42g)の尿酸が含まれ,血中尿酸量は2~4mg/dlで,5mg/dlをこえない。ところが,痛風やレシュ=ナイハン症候群Lesch-Nyhan syndromeの患者では,プリン代謝の異常のため,多量の尿酸が血中,尿中に見られる。痛風患者では6~7mg/dlで,最高20mg/dl,またレシュ=ナイハン症候群患者では血中濃度が10mg/dl,尿中では体重1kg当り40~50mg/日。痛風患者にはヒポキサンチンの構造類縁体であるアロプリノールを投与すると,尿酸の産生が抑制されるため,医薬として実用に供されている。尿酸は次のようにケト・エノール互変異性体として存在している。弱い二塩基酸で中性塩と水素塩とを生じる。
執筆者:徳重 正信
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1,3,7,9-tetrahydro-purine-2,6,8-trione.2,6,8-trihydroxypurine.C5H4N4O3(168.11).鳥類やは虫類の窒素代謝のおもな最終産物として排出される.すべての肉食動物の尿中に含まれ,ヒトの尿中には1日に約0.5~0.8 g の尿酸が排出される.化学合成もされている.無味,無臭の白い細かい結晶.分解点400 ℃ 以上.
1.836.λmax 207,236,292 nm(ε 14200,9800,2600,pH 8).エーテルに不溶,水に難溶,アルカリ性水溶液に可溶.二価の弱酸で,水溶液に硝酸を加え,蒸発乾固し,アンモニア水を注ぐと赤紫色のムレキシドを生成する(検出反応).また,尿酸はリンタングステン酸を還元して青色を呈する.この反応は尿酸の定量に用いられる.痛風患者では,尿酸の代謝障害のため尿酸の生成が異常に増加し,血液中の量が増大するだけでなく,関節や腎臓に尿酸が沈着する.プリンヌクレオシドなどの合成原料として用いられる.[CAS 69-93-2]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…尿酸の生成や排出の異常から,高尿酸血症となり,末梢の関節などに発作的な疼痛を繰り返す病気。一次性または特発性痛風と二次性または続発性痛風があるが,一般に痛風といえば一次性または特発性痛風のことをいう。…
…無脊椎動物でも,原腎管(扁形動物,袋形動物),腎管(環形動物,軟体動物),触角腺(甲殻類),マルピーギ管(昆虫類)など各種の排出器官を通じて尿が排出される。尿の主成分である窒素化合物はアンモニア,尿素,尿酸などで,タンパク質や核酸の代謝最終生成物である。これらの窒素老廃物の比率は動物の系統によって異なり,また同じ系統群のなかでも,種の生活環境に応じた変化がみられるが,おおざっぱにいって,水生無脊椎動物はアンモニア,哺乳類,両生類,魚類は尿素,鳥類,爬虫類,昆虫類,陸生巻貝類は尿酸が主成分である。…
…たとえば海産硬骨魚類ではえらにある塩類細胞から,また海産爬虫類と鳥類では眼窩(がんか)や鼻腔にある塩腺から塩化ナトリウムNaClが体外に分泌される。 尿中に出される窒素老廃物はアンモニア,尿素,尿酸などであるが,動物がこのうちどれをおもに排出するかは,その動物がすんでいる環境,とくに水の利用状態と密接な関係がある。タンパク質が分解してできたアミノ酸の脱アミノ反応によってアンモニアができるが,これは毒性が強いため速やかに体外に出さなければならない。…
※「尿酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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