アルバータ(英語表記)Alberta

精選版 日本国語大辞典 「アルバータ」の意味・読み・例文・類語

アルバータ

  1. ( Alberta ) カナダの州の一つ。ロッキー山脈の北東部に位置する。州都エドモントン小麦、石油の産額が多い。バンフジャスパーなどの国立公園がある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「アルバータ」の意味・わかりやすい解説

アルバータ[州]
Alberta

カナダ西部の州。面積64万2317km2。人口325万6800(2005)。州都で最大の都市はエドモントン,第2の大都市はカルガリー。カナダの主要民族とされるイギリス系,フランス系以外の人々,ドイツ系,ウクライナ系,北欧系の多いことが特徴である。インディアンも多い。州名は1878年から83年までカナダ総督を務めたローヌ侯の夫人でビクトリア女王の王女,ルイズ・キャロライン・アルバータにちなむ。彼女は州最大の観光地バンフ国立公園のルイズ湖にもその名を残した。

 州の東端はカナダ楯状地の西端に,そして州の西部はロッキー山脈に占められるが,その間はなだらかな乾燥した大平原となっており,伝統的に農業,牧畜業が主要産業であった。農業は小麦,テンサイ,大麦が三大主要作物であり,テンサイ耕作の過酷な労働に従事した日系カナダ人の哀話が知られている。牧畜業による収入は農業によるそれに匹敵するが,現在はあわせて州の総生産高の約8%を占めるにすぎない。またロッキーの景観で知られるバンフ,ジャスパーのほか,ウォータートン・レークス,エルク・アイランド,ウッド・バッファローの諸国立公園を擁し,国立公園の面積ではカナダ第1を誇るが,観光収入の上ではケベック,オンタリオ,ブリティッシュ・コロンビアより劣る。

 1947年にエドモントン近郊のルデュックLeducで石油が発見されて以来,アルバータ州天然資源の宝庫として一躍脚光を浴びるようになった。州の総生産高の約1/2を占める鉱業は原油タールサンドを含む),天然ガス,硫黄,石炭セメントが主であり,石油はアメリカ合衆国に輸出されている。工業は農業および石油の関連産業が圧倒的で,とくに石油化学工業は1974年以降飛躍的な発展を遂げた。州民1人当りの年間個人所得1万1067ドル(1980)はカナダ第1位であり,好況を反映して他州からの人口の移動も多い。

 アルバータ州は,1670年に設立されたハドソン湾会社の領有地の一部であり,1870年カナダへ移譲された時には,わずかにハドソン湾会社の交易所が散在する未開の地であった。しかし74年,この広大な地域の治安と秩序の維持のために北西部騎馬警察が創設され,カルガリーの南方約200kmのマクラウド砦に駐在するようになると,徐々に牧畜業者や開拓農民が到来し始めた。83年にはカナダ・パシフィック鉄道がカルガリーに到達し,移住の増加に拍車がかけられた。1901年の人口7万3100人は10年後には37万4000人に増加したが,この間の1905年にアルバータ州が誕生した。

 アルバータ州では大恐慌を背景に社会信用理論を掲げて登場した社会信用党Social Credit Partyなる地方政党が1971年まで,36年間政権を握り続けた。その後はローヒードPeter Lougheedの率いる進歩保守党が,圧倒的多数を占めている。カナダ随一の経済力を維持するべくローヒードは連邦自由党政府の経済政策と激しく対立してきたが,近年ここに西部カナダ党が誕生して西部分離主義を唱え,ケベック州と共にアルバータ州はカナダ政界に波紋を投げかける存在となっている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルバータ」の意味・わかりやすい解説

アルバータ
あるばーた
Alberta

カナダ中西部の州。平原州の一つで、面積63万9987.12平方キロメートル、人口297万4807(2001)。州都はエドモントン。南は北緯49度線でアメリカ合衆国と、北は60度線でノースウェスト・テリトリーズと、東は西経110度線でサスカチェワン州と接する。西は北半分が120度線で、南半分がロッキー山脈の分水界で、それぞれブリティッシュ・コロンビア州に接する。州の大部分は広大な台地で、北半分は川や湖が多く針葉樹の森林地帯となり、南半分はなだらかな起伏をもつ地域で小麦栽培や牧場地帯となっている。一面に続く小麦畑の果てには壮大なカナディアン・ロッキーズがそびえ、バンフ、ジャスパーなどの国立公園を含む自然公園群は世界遺産(世界自然文化遺産)に登録されている。気候は大陸性で、月平均気温は1月零下10~零下20℃、7月15~20℃。年降水量は350~550ミリメートルだが、南東部は300ミリメートル以下である。

 アルバータをもっともよく特徴づけているのは油田の存在で、1914年にターナー・バレーで最初の油田が、1947年にはレデュークで発見された。州内でカナダの石油の80%以上、天然ガスの90%強を産する。さらに、1960年代以降アサバスカのタールサンドが開発された。これらのエネルギー資源の開発に伴って増加した人口は、1941年には80万であったが、1979年には200万人を超えた。エドモントンとカルガリーはビルが立ち並ぶ大都市となった。農業が盛んでカナダ全体の年間生産高の約25%を占め、小麦、大麦、テンサイを産出する。州面積の半分以上は森林が占めている。アルバータはカナダでもっとも豊かな州である。

 州の一部は1870年までハドソン湾会社が支配していた。その後、カナダ自治領としてノースウェスト・テリトリーズの一部となり、1882年、ビクトリア女王の娘アルバータ王女にちなんで命名された。北緯55度以南ではカルガリーを首府とする地域が形成されていた。1886年カナダ太平洋鉄道の開通で入植者が急増し、大農場での小麦生産や大規模放牧が有名になった。1905年にカナダ連邦に加盟し、州となる。

[山下脩二]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「アルバータ」の意味・わかりやすい解説

アルバータ[州]【アルバータ】

カナダ西部の州。プレーリー西端にある。ロッキー山脈の主要分水界を西境とし,その東側の大平原は世界的な春小麦の産地。1947年州都エドモントンで石油が発見されて以来,天然資源の宝庫として注目されるようになった。エドモントン,カナダで人口第2の都市カルガリーを中心に原油(オイルサンドを含む),石炭,天然ガスを産し,1974年以降石油化学工業が飛躍的に発展した。64万2317km2。364万5257人(2011)。
→関連項目カナダカルガリージャスパー国立公園

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

大臣政務官

各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...

大臣政務官の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android