日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルマダ」の意味・わかりやすい解説
アルマダ
あるまだ
Armada スペイン語
スペインのフェリペ2世がイングランド征圧を目ざして1587年初めから用意した艦隊。Armadaは「艦隊」の意。無敵艦隊ともよばれるが、この名はスペイン側のものではなく、後世のイギリス人が広めたものである。16世紀後半、カトリック・ヨーロッパとプロテスタント・ヨーロッパとの抗争が激化するなかで、スペインとイングランドは北ヨーロッパと大西洋の2方面でことごとくその利害が衝突した。1587年2月、エリザベス1世がカトリックのスコットランド女王メアリー・スチュアートを処刑したことは、フェリペ2世にフランドル駐屯部隊によるイングランド征圧を決意させた。翌1588年7月中旬、2万2000の兵力を乗せた130隻のスペイン艦隊は、ラ・コルニャを出航、まもなく迎撃に出たイングランド艦隊とドーバー海峡で9日間砲火を交えた。射程の長い軽砲を備えた小型船を主力とするイングランド軍は、地中海流の衝角戦を挑むスペイン軍を巧みにかわしながらかなりの損害を与えてその戦意をくじいた。この後スペイン軍はさらに北海の嵐(あらし)によって損失を重ねたが、それでも船舶の約半数はスペインに帰着した。それよりも3分の2近くに上る将兵の喪失とグラナダ征服(1492)以来の勝利に支えられた自信の動揺のほうが後のスペイン衰退の遠因となった。
[小林一宏]